【トップインタビュー】Wolt Japan代表 ナタリア・ヒザニシヴィリ氏、日本の市場を分析「“フードデリバリーは贅沢品”という意識を変えるため取り組む」

Wolt Japan代表 ナタリア・ヒザニシヴィリ氏
Wolt Japan代表 ナタリア・ヒザニシヴィリ氏

Wolt Japanはデリバリーの日常的な利用を促すべく、「デリバリーなのに店頭価格」というサービスを展開中だ。デリバリー商品の価格を実店舗の店頭価格と同じにすることで、商品価格+配達料でデリバリーを利用できる施策だ。利用は増加傾向にあるという。

今年11月には、対象のメニューを送料やサービス料を含めて890円以下で注文できる「タイムセール」という取り組みを新たに始めている。海外と比べて割高な日本のフードデリバリーサービスを、より利用しやすい形で提供し、支持の獲得を目指している。

Wolt Japanの代表であるナタリア・ヒザニシヴィリ氏に日本市場の現状や、今後の施策などを聞いた。

〈市場分析、日本でデリバリーが浸透しづらい要因は「価格」〉

――他国と日本で市場に異なる点はありますか。

3点あります。

まず、日本ではデリバリーは贅沢なサービスだという認識が根強いです。これは価格が高いからというのが最も大きな要因です。

次に、日本では、外食をするというカルチャーが非常に根強いです。デリバリーよりも、お店に食べに行く方が好き、という人が多いのはそのためです。

最後に、例えばヨーロッパ各国の市場と比べて、日本はそもそも大きなマーケットです。レストランの数もたくさんあります。人口対比でのレストランの数は、日本は非常に多いです。マーケットが大きい分、日本において新しい商品や新しいアイディアを提供しようと思うと、時間もかかるし、労力もかかるのです。一つの事実として、大きな市場で事業を行うということは簡単ではありません。

――日本のフードデリバリー市場全体をどう分析していますか。

フードデリバリー業界は、世界全体でコロナの時にかなり成長しました。しかし、日本は他国と比べて成長率も低く、そこまで浸透もしていません。

その理由は、日本のデリバリーの価格が少し高いためです。デリバリーサービスに掲載されている商品の価格は、店頭の価格と比べて30%~40%、時には50%も高くなることがあります。これは、お店側がデリバリーにかかるコストを価格に転嫁しているためで、日本でフードデリバリーがそこまで拡大していない一番の理由だと思います。

こうした状況を打ち破るために、Woltでは「デリバリーなのに店頭価格」や「タイムセール」といった取り組みを開始し、より利用しやすい形でサービスを提供しています。

――Woltが他のフードデリバリーサービスと差別化できる点は何ですか。

私たちは、競争相手にフォーカスするというアプローチは取っていません。お客様にフォーカスすることが我々の差別化だと考えています。お客様の声に耳を傾けたことで誕生した施策が「デリバリーなのに店頭価格」や「タイムセール」などです。

Woltでは2024年10月から「デリバリーなのに店頭価格」を開始し、今年はサービスの実施エリアの拡大などを進めてきました。

現在では、広島・札幌・東京など10都道府県の20都市で展開しています。このキャンペーンを一度でも利用するとリピーターになってくださる方も多く、アクティブユーザーは増加傾向にあります。これは、この取り組みを行っている全ての地域で一貫して見られる状況です。

戦略的な優先事項としては、まだデリバリーを使ったことのない人をいかに取り込むかということです。この「デリバリーなのに店頭価格」で新たな利用者を増やし、サービスを全国に拡大したいと考えています。

Wolt Japan代表 ナタリア・ヒザニシヴィリ氏
Wolt Japan代表 ナタリア・ヒザニシヴィリ氏

〈「デリバリーなのに店頭価格」拡大 注文が5倍になった店も〉

――飲食店が今まで上乗せしていたコストの負担はどのようになっていますか。

「デリバリーなのに店頭価格」は、お店側とWolt側の双方の努力によって実現している仕組みです。Woltはお店からいただく手数料を減らし、お店はこれまで全てお客様に転嫁していたコストを負担します。これによって、商品の価格を店頭価格と同じ価格にしています。今までであればお客様は商品価格の上にかなりの価格を上乗せして料金を支払っていましたが、店頭価格と同じにすることで、よりサービスを利用しやすくなったのではないでしょうか。

この取り組みに参加したお店の注文は、傾向として2~5倍ぐらいに増えています。結果的にお店の売上は取り組み開始前より増えることになり、お客様にとっても、お店にとっても喜ばしい形となっています。

〈手頃な価格でサービスを提供しデリバリーの浸透へ〉

――今後、日本のデリバリー市場でどういった点に注力しますか。

やはり価格です。ここが一番今まで難しかったポイントであり、一番大きなチャンスが生まれるポイントでもあるからです。

私たちが開始した「デリバリーなのに店頭価格」は、今では市場の主流になりつつあります。「デリバリーなのに店頭価格」がフードデリバリー業界の当たり前になるよう、より多くの地域にこの取り組みを広げるとともに、参加してくれるお店の数を増やしていきたいと思っています。

また、今年新たに開始した「タイムセール」についても、より広いエリアで展開できるようにしたいと考えています。

デリバリーは贅沢なサービスだというお客様の認識は根強く、そうしたお客様の考え方を変えるのは時間がかかると思っています。我々が取り組むべきことは、こうした意識を変えることです。手頃な価格で皆様にサービスを提供し、より多くの方にWoltを試してもらいたいと思っています。

タイムセールの様子
タイムセールの様子
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食品産業新聞

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食品・食料に関する事件、事故が発生するたびに、消費者の食品及び食品業界に対する安心・安全への関心が高っています。また、日本の人口減少が現実のものとなる一方、食品企業や食料制度のグローバル化は急ピッチで進んでいます。さらに環境問題は食料の生産、流通、加工、消費に密接に関連していくことでしょう。食品産業新聞ではこうした日々変化する食品業界の動きや、業界が直面する問題をタイムリーに取り上げ、詳細に報道するとともに、解説、提言を行っております。

創刊:
昭和26年(1951年)3月1日
発行:
昭和26年(1951年)3月1日
体裁:
ブランケット版 8~16ページ
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