127万回再生も、子どもに負けないくらい給食を楽しむSNS「給食おじさんず」の狙いとは
この2年、給食関係者から注目を集める会社がある。
それは、茨城県を中心に給食用食材を運ぶ卸問屋を営むウルノ商事だ。同社は2024年9月に突如、YouTubeとTikTokで公式アカウント「給食おじさんず」を開設した。社長はじめ複数の社員が、学校給食に絡めたクイズやゲームを職場で繰り広げている。開設後、毎週2本投稿を続けて、26年5月時点で動画本数は230本にのぼる。例えば、イラストを見て何のアニメに出ている給食か当て合う動画は、127万PV を獲得。給食を食べる児童に負けないくらい給食を楽しむ姿は、くすっと笑えて痛快だ。
同社はなぜ、このような動画を投稿し始めたのか。仕掛け人の宇留野裕太社長に話を聞いた。
■入社面接と転職する社員のため
なぜ、SNSの投稿をし始めたのか。
直球の質問をすると、宇留野社長は「入社面接で、会社の雰囲気はどうですか? とよく聞かれるが、雰囲気なんて説明しようにも説明できないので、動画をとって、見てもらえたら分かるよ~と言えるようにした」と話す。
ウルノ商事は、水戸市に本社を置く給食用食材卸企業で、関東圏の小中学校や病院・福祉施設、ホテルや飲食店まで幅広い給食施設に食材を届けている。年商は約80億円。社員数は191人となっている。
入社面接のためだけに果たして、230本もの動画をとれるものなのか。
きっと、労働人口不足のなか、会社の知名度を上げるためにSNSを始めるというよくある理由なのではないか。
そう尋ねると、「それはなんとも思っていない」と即答する。
「そうではなくて、うちの社員がもし転職するとなったときに、いろいろな経験をしてきたと説明できるようにするためだ」と話す。
世間では、人手不足により事業継続が難しくなり倒産する会社も増えている。
にもかかわらず、転職する社員のためにSNSを展開する会社なんて・・・聞いたことがない。
「確かに人手不足で、転職のハードルはどんどん下がり、選ばなければどこでも働ける時代がすぐそこまで来ている。しかし、選ぼうとするとハードルは高くなるからこそ、そのハードルを越えられるような能力や経験を当社で身につけてもらわないと当社に入社した意味がないことになる。入社して仕事したあと、転職したら給料が下がるのは嫌だから、当社に入って、1回でも人生が交わったからこそ、良いように人生をステップアップしてほしいと思う」と説明してくれた。
ウルノ商事は、食品メーカーから多数の食材を仕入れて、給食施設や飲食店の求めに応じて食材を配送し、そこで提供するメニューの提案も行う。まさに、業務用の食事を陰ながら支える縁の下の力持ちである。そうした仕事だけでなく、SNSの情報発信を通じて、動画撮影・編集・投稿などデジタルの仕事にも関われるようにしたという。
動画を見ると、「ポンデリングは給食にあるか?」「マクドナルドのザク切りポテト&肉厚ビーフは給食にできるのか?」「まな板に載った材料で、できる給食はなにか?」「この給食、実在する?しない?」など、内容は多岐にわたり、好奇心をそそる内容となっている。
■「会社ではやりたいことをやっていいと伝えたい」
チャンネル登録者数はSNS全体で3,600人を超え、給食関係者の中にも根強いファンがいる。
外向けに伝えたいことを聞くと、宇留野社長は「伝えたいものは特にない」と即答する。
「外は全く意識していない。それより社内だ。社員に、会社は変わったんだよ。やりたいことをやっていいんだよっていうのを伝えたかった。一度きりの人生。面白くないことはやりたくないだろ? それを極力、排除して、面白いこと、楽しいことをやろうじゃないか」と語る。
宇留野社長はこう話すが、動画はいずれも学校給食に絡めたものばかりで、給食への愛を相当感じる。また、同社の幹部社員に聞くと、SNSの動画を見て入社する社員もいるという。
入社面接時に会社説明をしやすくすることや転職する社員の経験になるために始まったSNSだが、楽しく風通しのよい会社づくりや新規採用など、様々な効果を生んでいるようだ。







