〈清涼飲料市場〉市場を創る製品がヒットのカギ コーヒー・お茶でユーザー拡大
清涼飲料市場は、大手各社が積極的なマーケティング投資を行い、例年以上に新製品やリニューアル品がヒットしている。その中でも新しいユーザーを取り込もうとする新規需要創造型の製品の成功が目立っている。
最も注目を集めたのが、サントリー食品インターナショナルの「クラフトボス」だ。「缶コーヒーじゃない、ボス。」として、オリジナルの500mlPET容器で展開したところ、これまで缶コーヒーを飲まなかった20~30代のデスクワーカーからの支持が集まった。需要の大きい缶コーヒーヘビーユーザーをあえて狙わず、若い世代が自分向けだと思える容器と苦味のない飲みやすさが受け入れられた。来年には、競合メーカーもパーソナルサイズのPETコーヒーに注力するもようで、同製品が市場のルールを変えるきっかけになりそうだ。大容量のPETボトルコーヒーは、春先の気温が低かったこともあり、前年実績を下回っているが、トップシェアのネスレ日本は数字を伸ばした。けん引しているのは「ネスカフェゴールドブレンドコク深め」で、カフェなど外ではアイスコーヒーを飲むものの、家では飲まないユーザーを、コクの深い味わいとトップシェフが推薦するコミュニケーションで取り込めたことが大きい。4月には泡を作れる同製品専用の家庭用コーヒーマシンを投入し、さらにカフェ品質の味覚に近づけた。
リキャップ缶コーヒーでも、UCC上島珈琲の「ビーンズ&ロースターズ」が若年層ユーザーを開拓している。カフェメニューを充実させるとともに、苦味のないほっこりした優しい味わいと、容器自体にカフェのイメージを持たせることで、独自の存在感を打ち出している。
お茶では、昨年のリニューアルで「キリン生茶」が、ガラスびんのようなボトルと深いコク、軽やかな余韻により、女性と若年層ユーザーの獲得に成功。「サントリー烏龍茶」も5月のリニューアルで、すっきりした後味とスタイリッシュな容器に変更し、潜在顧客を取り込み、久しぶりに前年を上回る実績で推移している。
清涼飲料市場は、ボリューム層である40代~50代男性をメーンターゲットにした製品で溢れている。その中で新規需要創造型の製品がヒットしているのは、若年層や女性などの新規ユーザーが自分向けのアイテムだと認識してファンになり、自らSNSや口コミで発信するためだ。
飲料業界に限らず、人々が潜在的に感じている新たに出現した課題を解決することは、事業の拡大につながっていく。売れる製品を作るのではなく、市場を創る製品を作ることがヒットのカギとなっている。