清涼飲料業界が「プラスチック資源循環宣言」、30年度までにPETボトルの100%有効活用を目指す/全国清涼飲料連合会

実証実験ではPET専用と缶びん専用の2つのリサイクルボックスを設置
清涼飲料水の業界団体、一般社団法人全国清涼飲料連合会(全清飲)は11月29日、都内で記者会見を開き、「清涼飲料業界のプラスチック資源循環宣言」を発表した。PETボトルなどの容器包装を使用している事業者団体として、プラスチック資源循環や海洋プラスチック対策について、業界一丸となり、生活者や政府、自治体、NPOなど関連団体と連携しながら、2030年度までにPETボトルの100%有効利用を目指すもの。「混ぜればごみ、分ければ資源」の考えのもと、短・中・長期の取り組みを設定し、資源循環の高度化を目指し、海洋ごみゼロ世界の実現に貢献する業界としての方向性を示したことになる。

全清飲の堀口英樹会長(キリンビバレッジ社長)は、「資源循環や海洋プラスチック対策などの課題に対応しながら、持続可能な社会を実現したい。そのために飲料業界は、食の安全や技術的な可能性、経済性を考慮しながら、3Rに努めていく。回収のさらなる向上を進め、プラスチック資源循環の総合的な推進をしていきたい」と話した。

清涼飲料業界では、以前から容器の散乱防止や、リサイクルなど3R推進に取り組んでおり、PETボトルの17年度リサイクル率は84.8%と世界的にも高い実績となっている。しかし、海洋プラスチックが社会問題化する中、改めてプラスチックの資源循環の重要性を考慮し、会員各社からメンバーが集まって今年8月にワーキンググループを立ち上げ、回収の仕組みのあり方などを検討してきたという。

リデュースおよびリサイクル率の推移(上)、日欧米のPETボトルリサイクル率の推移(下)

当面の取り組み項目である自販機での空容器の散乱防止対策として、自販機の回収ボックスを「自販機専用空容器リサイクルボックス」へ名称を統一する。本来は清涼飲料水の飲み終わった後の空容器のリサイクルボックスだが、現状は家庭からのゴミや弁当の容器など、異物が混入しており、これが回収したものの品質を落としリサイクルの妨げになっているだけでなく、容器内がゴミでいっぱいとなり、本来入るべき空容器が入らずに散乱の一因となっていることを解決するもの。
 
12月中旬より実証実験を開始。さまざまなごみなどの異物が混入していることから、消費者啓発のステッカーを貼付したPETボトル専用と缶びん専用のリサイクルボックスを2個設置して、実験後に散乱状況、異物混入・分別状況を確認するという。検証結果に応じて、同取り組みの拡大やさらなる対応も検討していく。
 
使用済みPETボトルの循環型リサイクルであるボトルtoボトルは17年度、再生PET樹脂量で61.3千トンとなり、前年度比6.7%増加している。PETボトルへの再利用は新たな原油の使用を削減し、資源循環リサイクルとしての貢献が期待できるため、今後も増加傾向が続きそうだ。
 
全清飲の中田雅史専務理事は、今回の宣言について、「清涼飲料業界として、従来通りの取り組みのままではいけないのではないかと考えた。これまでも業界として資源循環に取り組んできており、その結果、世界でも高水準のリサイクル率を達成していると自負しているが、現実的にはPETボトルが散乱しているという事実もある。これまでやってきたレベルよりもうひとつ上のレベルで取り組まなくてはならない。そういう思いのもとで業界を挙げてあるべき方向性を定め、今回の宣言の発表に至った」とする。

「プラスチック資源循環宣言」を発表した全清飲・堀口会長(右)と中田専務理事(中央)

「プラスチック資源循環宣言」を発表した全清飲・堀口会長(右)と中田専務理事(中央)

〈大手メーカーの動きも活発化〉
大手各社の資源循環に向けた動きも加速している。今年1月には、ザ コカ・コーラカンパニー(米国本社)が、2030年までにコカ・コーラ社製品の販売量に相当する缶・PET容器を全て回収・リサイクルし、廃棄物のない世界を目指すと発表。日本コカ・コーラは、「容器の2030年ビジョン」と命名し、取り組んでいる。15年に「2020年目標」の1つとして「持続可能な容器」を掲げ、PET容器の軽量化や空き容器の回収・リサイクル推進の取り組みを進めていたが、回収率やリサイクルの重量比率までは言及していなかった。その意味で「容器の2030年ビジョン」は、一歩踏み込んだ内容といえる。
 
サントリー食品インターナショナルは、国産最軽量のPETボトルの導入や国産最薄の商品ラベルを実用化、さらに植物由来原料のペットボトル導入などに取り組んできた。また、使用済みのPETボトルは新しいPETボトルとして繰り返しリサイクルするため、11年には協栄産業社と共同で使用済みPETボトルをPETボトルを再生する「メカニカルリサイクル」を日本で初めて開発し、リサイクルPETボトルを積極的に使用。今年は、さらに行程を省くことで環境負荷低減と再生効率化を実現す技術(FtoPダイレクトリサイクル技術)を世界で初めて共同開発した。まずは中期目標として、2025年までに国内清涼飲料事業における同社全ペットボトル重量の半数以上に再生PET素材を使用することを目指すとしている。
 
アサヒ飲料は、グループ会社が自動販売機に併設している回収ボックスでの清涼飲料水の容器の回収率向上を目的に、「あき容器回収ボックス」と記したオリジナルシールを約13,000枚用意し、今年6月から張り付け、PET、缶、びん容器の回収率向上を図っている。異物混入を防ぎ、空容器の回収率を向上させることで、空容器を資源として有効活用することを目指すもの。また、商品にロールラベルをつけない商品となる(ラベルレス商品)「アサヒ おいしい水 天然水 ラベルレスボトル」を総合オンラインストアAmazon.co.jpで5月から発売している。ラベルレスにより、樹脂使用量を約90%削減し、環境負荷を低減するとともに、生活者のリサイクルへのアクションをストレスなく生み出すことで、資源循環に貢献する取り組みだ。
 
〈酒類飲料日報 2018年11月30日付より〉