「クラフトボス」全品刷新、季節に合わせて味わい変化、秋冬は“満足感”を向上へ/サントリー食品インターナショナル
サントリー食品インターナショナルは、「クラフトボス」シリーズのコールド・ホット商品を9月から順次刷新する。2017年に誕生した「クラフトボス」は、500mlペットボトルコーヒーのパイオニアとして市場を牽引してきた。在宅ワークの広がりを受け、この秋から季節に合わせた味わい提案を行うことで、飲みやすさだけではない価値をつけて商品の魅力を高めていく。また、今年秋冬期の広告出稿も例年の倍の規模で展開するなど、よりいっそうペットボトルコーヒー商品を強化する考えだ。
トップブランドの「クラフトボス」が積極的な活動をすることでペットボトルコーヒー市場が活性化し、昨今のコーヒー飲料の潮流である“缶からペットへ”の動きがさらに加速しそうだ。
液体コーヒーの容器構成比(本数ベース)は、185gショート缶が53%、ボトル缶が21%を占めるが、ペットボトルはこの数年で急速に売り上げを伸ばして24%を占めるまでに拡大している(サントリー食品調べ)。売り場では商品ラインアップが増えてユーザー層が40-50代にも広がり、テレワークなど在宅での仕事中や車の運転中などさまざまなシーンで飲用され、コーヒー飲料市場の中で年々存在感が高まっている。
500mlペットボトルコーヒー市場を創造してきた「クラフトボス」シリーズは、すっきりとした味わいとスタイリッシュなボトルデザインで、缶コーヒーではアプローチしきれなかった若い世代や女性から好評を得て、時間をかけてゆっくりと楽しむ“ちびだら飲み”飲料として定着した。社会環境は大きく変化しているが、“働く人の相棒”であり続けるというブランドの価値は変えていない。
8月31日にオンライン取材を受けたサントリー食品インターナショナルのブランド開発事業部の大塚匠課長は、「“クラフトボス”は、今年7月から“どこでもワーク”を新しいテーマにコミュニケーションを展開しています。リアルもリモートもどっちもありという考え方で、働く場所がどこであろうとも、その状況下での創意工夫を行い、柔軟な働き方に取り組む人たちが快適に過ごせるようなお手伝いをしたい。そのようなブランドへと進化していきます」と話す。
そして、9月から「クラフトボス」は全商品を刷新し、秋冬のCM展開は例年に比べ倍増させ、ブランドの強化を図る。リニューアルする「クラフトボス」(コールド製品)は、コーヒーとTEAの全品を季節に合わせたシーズンブレンドに変更し、秋冬に求められる味わいに進化させる(コーヒーは9月15日以降、TEAは10月13日以降)。
コールドタイプの商品は、夏場においては外回りの営業担当者や屋外で働く人々から、飲みやすさを背景とした“止渇”の快適さを提供して支持されているが、秋冬の季節は、室内で働く人々に向けて“起動”の快適さを提供する考えという。
「秋冬でも意外とオフィスやトラックなど車内の中は室温が高く、ドライバーの方も長期間眠気と戦われている。重機を操縦する方も室温が高くアイスコーヒーを飲まれるケースが多い。そういった中で求められる快適さは、眠気や暑さをクールダウンしてくれる“起動”だと思います」(大塚課長)。
そこで、これまでの「クラフトボス」らしい快適な飲み心地は維持しながら、ブラックは芳ばしいコーヒーの香りを強化し、ラテはミルク感を強化し、スペシャルティ微糖は深煎りコーヒーの割合を増やすことでコクを強化することで、満足感を高める考えだ。
大塚課長は、「これまで出勤や出張などで自然と季節の移ろいを感じながら気分転換ができていた側面もあったのではないかという思いもあり、そのような機会を経ているので、商品を通じて季節感を感じながら、少しでも快適に働いていただきたい。秋冬も働く人を応援できるように商品を進化させていきます」と話す。
〈ホット商品は再栓できる“便利な本格”のポジション獲得へゼロベースで見直し〉
また、「クラフトボス」シリーズは、ホット製品の開発についての考え方も変更し、9月1日から発売する。これまでのホット商品は、コールドの500mlペットボトルユーザーにホットへスムーズに移行してもらうため、コールド商品の延長線上で開発していたという。
「クラフトボス」シリーズ ホット商品
しかし、昨年のホットシーズンの顧客構造を同社が調査したところ、ホットの時期だけ500mlペットボトルコーヒーを購入する“シーズナル新規層”が数多く存在していることがわかったという。ブラックのホットで40%、ラテのホットで48%、ミルクティーで52%の構成比を占めるほど、ホット時期だけのユーザーは意外に多い。
大塚課長は、「ホットのシーズンだけ購入される“シーズナル新規層”の方は、最初は暖を取るために、その後は午前中をかけてゆっくり飲まれている傾向です。ホットの500mlペットボトルコーヒー・紅茶を、おいしさ、温かさ、利便性というものを兼ね備えたものとして選ばれているようです。シーズナル新規層にも目を向け、おいしさと利便性を兼ね備えた“便利な本格”を開発テーマに、“クラフトボス”ならではの価値提供のため、ゼロベースで中味・パッケージを見直しました」とする。新ホットがブラックでエスプレッソを増強し、ラテで乳脂肪分をアップしているのは、ホット飲用時の満足感を高めるねらい。
“どこでもワーク”をテーマに、「クラフトボス」は9月以降にコールド商品を、10月以降はホット商品のCMを展開し、ブランド力の強化とペットボトルコーヒーの市場を活性化する考えだ。
〈イエナカは濃縮タイプの「カフェベース」が伸長〉
一方、「ボス」ブランドで今年最も成長しているのは、1本で約10杯分が楽しめる濃縮タイプの「ボス カフェベース」(340mlペットボトル)である。2020年3月に「ラテベース」から「カフェベース」に名称変更するとともに、ブラック・ラテが兼用できるように中味を刷新したところ、前年比160%まで販売が伸長した。
濃縮タイプ飲料「ボス カフェベース」シリーズ
もともと忙しい共働き世帯から支持されていたが、コロナ禍で“おうちカフェ”と“在宅勤務”での消費が後押しした。働く場所がボーダレス化する中で、さらなる成長が見込まれる。
〈コーヒー飲料の代名詞の缶コーヒーは“現場で働く人”に寄り添う〉
ペットボトルコーヒーの拡大もあって市場が減少している缶コーヒーは、コロナ禍で自販機や都心部のコンビニエンスストアの販売減少もあって、今年はさらに厳しい状況だ。ただ、大塚課長は、「缶コーヒーの“ボス”は、コロナがどうあれ、変わらず今日も“現場で働く人”に寄り添い続けます」とした。
働く人を前向きに鼓舞する新商品として、同社は「スピリットオブボス」(185g)を9月8日から発売する。中味は、自社の高機能焙煎機による新焙煎など高い技術力により、香料不使用で力強い香りとコクを提供する。ヘビーユーザーに向けたマーケティング活動を継続強化し、自販機キャンペーンの展開やWEBコンテンツを充実させる考え。大塚課長は、「働くとは、前を向くこと。この一杯で仕事へと向かう人の背中をそっと後押しする存在になりたい」と話す。
「スピリットオブボス」
コーヒー飲料は、時代とともに選ばれる形態も変わってきた。「ボス」は、現在の働き方や過ごす場所、心理状態の変化をチャンスに変えるチャレンジを進めている。