アイリスオーヤマが飲料水事業に本格参入、災害発生時の課題解決へ、2025年に300億円規模目指す
アイリスオーヤマは、富士小山工場(静岡県駿東郡小山町)の一部を改修し、新たに飲料水事業に参入する。天然水と強炭酸水の本格生産を2月18日付で開始し、富士小山工場(静岡県)から順次出荷する。
ラインアップは、「富士山の天然水」(500mlPET/98円税抜・以下同、2LPET/同158円)、「富士山の強炭酸水」(500mlPET/128円)。全国のスーパーマーケット、ホームセンター、インターネットサイトを中心に展開する予定だ。初年度の販売金額は50億円、2025年には300億円規模を目指す。
アイリスオーヤマは、今後想定される首都直下地震、南海トラフ地震といった大規模災害発生の際に、被災各地の生命と衛生環境維持に向け、飲料水を供給する体制を早期に構築するべく、飲料水事業に取り組む。
アイリスオーヤマの大山晃弘社長は2月18日に富士小山工場で開催した発表会で、以下の通り話した。
「10年前に東日本大震災が発生し、本社が宮城県にある当社も被災企業になった。震災被害の中で大きな問題があったのがインフラのストップだ。特に水は、断水が大規模に発生した。生活水がなく、たまたまスポーツセンターにあったプールの水を使ったり、多くのお客様がホームセンターでお水を買われるということが発生した。そういった意味で、震災の初動の対応として飲料水の確保は非常に大事になってくる。これに対してアイリスオーヤマとして何ができるのかを考えた」。
「先週にも福島県沖を大きな地震が襲った。この時は大きな人的被害はなかったが、一部地域では広範囲の断水が発生した。飲料水に関して当社に問い合わせがたくさんきた。われわれは仕入れていた他社製品の水をたくさん持っていたので、迅速に被災地域に販売するという即応体制が整っていたので事なきを得た。ただ、もし関東地域で大きな地震が起きたら大規模な断水がある。仕入れた水を供給するだけでは対応しきれないため、われわれ自身も水を生産しなくてはならないと考えた」。
「そこで今回、飲料事業に本格参入した。小山町で水を採取し、井戸からくみ上げてフィルターをかけながらボトリングをして関東地域に配送する。富士小山工場は都内から1時間半の好立地なので、何かあれば関東圏の物流センターや店舗に一気に配送できる。また、自社の埼玉工場やつくば工場(茨城県)に在庫を置くことで、何かあればすぐに対応できる形にする。そういうことで震災被害を減らしていきたい。とはいえ、防災のためだけではない。商品には富士の地下水を使用しており、ミネラル分のバランスの取れたすっきりとした水である。日常でも非日常でもお役に立ちたい」。
アイリスオーヤマ 大山社長
また、2月13日に発生した福島県沖地震による各地での断水の発生を受け、アイリスオーヤマは2月18日に約30億円の追加投資を決定したことを発表した。この追加投資により、2021年10月を目途に第2ラインを増設し、現状の生産・供給能力を2倍に強化するという。
〈富士小山工場 飲料水生産概要〉
▽所在地
静岡県駿東郡小山町桑木221-1
▽投資額
約30億円
▽生産能力(1h当り)
天然水750ケース、炭酸水650ケース
▽生産商品
富士山の天然水(500ml、2L)、富士山の強炭酸水(500ml)
▽生産ライン特長
ペットボトル内製化、全行程自動化による省人化
▽工場設立日
1997年
▽敷地面積
約23,000平方メートル(18,307パレットの自動倉庫を保有)
〈追加投資概要〉
▽追加投資額
約30億円
▽追加投資内容
第2ライン増設
▽生産能力(1h当り)
天然水750ケース、炭酸水650ケース
▽稼働予定
2021年10月(予定)