“円太郎バス”の走っていた大正時代のコーヒーの味は?UCC×都営交通「1924珈琲」クイズ景品向けに開発
このコーヒーは、都営交通がUCCコーヒーアカデミーとコラボレーションした「1924珈琲(オリジナルブレンドコーヒー)」である。今回のキャンペーンのために作られたもので、大正当時の味わいをイメージし、ブラジル産コーヒー豆をメインに、苦み、コクがある深い味わいが特徴という。
「1924珈琲」を監修したのは、UCCコーヒーアカデミー専任講師である村田果穂(みほ)さん。数々の抽出技術コンテストなどで上位入賞を果たしているコーヒーのスペシャリストだ。村田さんに、どのようなイメージで約100年前のコーヒーを作ったのか、話をきいた。
UCCコーヒーアカデミー専任講師 村田さん
――「1924珈琲」は、「円太郎バス」が運行していた約100年前をイメージして製品開発されたと聞きました。どのように作られたのですか。
約100年前のコーヒーということで、飲んだこともないですし、知らないことも多いため、いかに形にしていくかを悩みました。そこで、「UCCコーヒー博物館」(神戸市)の協力を得ながら歴史的な背景を調べ、当時のコーヒー豆の輸入量も参考にしながらどのような原料(コーヒー豆)を使っていたのかを考えて試作品に取り組みました。
ただ、その当時の輸入量を参考にして作ってみた試作品は、正直おいしいとは言いづらいものでした。今回の企画の意図には、“おうち時間を楽しんでいただきたい”というねらいもあったので、生活者の皆様においしく飲んでいただけるように何度も作り直しました。
――「1924珈琲」を飲みましたが、苦みの中にもコクをしっかり感じます。中味設計にあたって工夫された点はどこですか。
原料のコーヒー豆にブラジル産を選んだのは、都内で評判だった喫茶店がブラジル産のコーヒー豆を使用していたことを参考にしました。そこで、当時の日本に輸入されていたコーヒー豆の多くはインドネシア産でしたが、ブラジル産をベースにしました。
そして、当時飲まれていたコーヒーは、苦みが強く、焙煎も深い傾向にあるのではと考え、苦味とコクにフォーカスして、バランスを整えるような味づくりを目指しました。作るからには、現代の方々もおいしいと感じられるものを作りたいと考えましたが、予想以上にいい味わいになっているので、多くの方に飲んでいただきたいです。
また、明治・大正時代は、「ミルクホール」と呼ばれる飲食店がたくさんあり、コーヒーもミルクと混ぜて飲まれていたようです。そこで、「1924珈琲」は、ミルクと合わせて飲んでも負けない味づくりを考えました。浅煎りでは、やや水っぽくなりやすいため、深煎りにすることで、ミルクと合わせてもしっかりコーヒーの風味やコクがありながら、ミルクの甘さも楽しめるような工夫をしました。
おうち時間が増えて、最近は産地や抽出方法にこだわったスペシャルティコーヒーを飲まれる方が増えるなど、コーヒーはこれまで以上に注目されています。今回の「円太郎バス」は大正時代に活躍していたバスです。大正時代といえば、最近では大正時代をモチーフとした漫画が映画化してヒットするなど社会現象にもなっています。漫画を読みながら、その時代に思いを馳せてこのコーヒーを飲んでいただくのも新しい楽しみ方かもしれません。
〈よりコーヒーの活躍できる場所を拡大させていく〉
UCCは、今回の都営交通とのコラボレーションに至った背景について、もともとはコロナ禍で外食業が苦戦しているため、これまでとは異なる分野や顧客にアプローチするねらいがあったとする。そして、東京都交通局との話し合いで、いわゆる“おうち時間”の増加により、従来は鉄道やバスで出勤していた人々がテレワークを余儀なくされている人たちに、少しでも貢献できることはないかを考えたという。
「そこから、最初はご自宅でコーヒーを飲みながら、ホームページなどで鉄道の画像を見て、電車に乗っている気分が味わえたら楽しいのではないかと考えました」(UCCコーヒープロフェッショナル担当者)。その後、話し合いを重ねる中で、国の重要文化財の「円太郎バス」をモチーフにしたコーヒーの開発に取り組むことになったという。
コロナ禍で外食事業は厳しい状況が続くが、UCCはコーヒーを外食関係ではない業種に提案することで、よりコーヒーの活躍できる場所を拡大させていく考えだ。
なお、都営交通では、ウェブサイトで「円太郎バス うごく影絵」を公開している。関東大震災から急ピッチで復旧していく東京の街並みの中を、円太郎バスの運転手となって加速・減速しながら運転できる内容になっている。