家庭用コーヒー市場、コロナ禍も高水準で維持、秋冬商品は嗜好の多様化に対応
日本のコーヒー消費量は、2020年に前年比4.9%減の43万719トンとなった(全日本コーヒー協会調べ)。コロナ禍の外出自粛の影響で、喫茶店やカフェなど外食での飲用が大幅に減少したことが主な要因。(なお、2021年上期消費量は家庭外消費が増え3.9%増と回復している)。
コーヒー生豆輸入量と国内消費量(資料;全日本コーヒー協会)
一方、在宅飲用が増加したことで家庭用コーヒーは伸長している。総務省の家計調査でも2020年のコーヒー(嗜好品)の1世帯あたり支出額は6,988円となり、前年の6,378円を610円も上回っている(二人以上世帯が対象)。
コーヒー(嗜好品)の1世帯当たり年間支出金額(二人以上の世帯、総務省調べ)
家庭用コーヒーは2020年の反動で2021年は減少しているものの、新型コロナ前よりもベースは上がっており、ユーザーが増えている状況だ。その分、ニーズも多様化しているため、若年層からお年寄り、簡便派からこだわり派、女性層や健康志向の人たちをねらった商品の開発が進み、一斉に商品化されてバラエティ豊かなラインアップとなっている。
そのような中、現在コーヒー業界では、生豆の相場高、円安と物流費高騰などにより、レギュラーコーヒーの値上げの動きが相次いでいる。UCC上島珈琲は9月1日から家庭用レギュラーコーヒー約40アイテムでメーカー出荷価格の改定を実施し、味の素AGFも、10月1日納品分より、家庭用レギュラーコーヒー14品種と、通販限定レギュラーコーヒー26品種を価格改定する。キーコーヒーも、コーヒー製品の価格を10月1日から改定する。家庭用では主力製品の小売店の実質店頭価格が20%程度上昇する見込みという。
コーヒーの需要は、中国やロシアなどでも人気が高まっているほか、生産国のブラジルでも多く飲まれるようになった。そして、新型コロナの流行で停滞していた各国の経済活動が再開されてさらに需要は高まっており、世界的な異常気象も起こっているので、今後も価格改定はありそうだ。それでもコーヒーが人々の 生活にしっかり入り込んでいることが、コロナ禍においても在宅需要が増加したことからメーカーも流通もわかっている。今後は手頃な価格の商品だけでなく、よりいっそう価値を訴求する取り組みが増えそうだ。
秋冬の各社の商品戦略でもその一端が表れており、9月に発売される商品では、それぞれが自社の主力商品のバリューアップに取り組んでいる。UCC上島珈琲は、主力の「UCCゴールドスペシャル」を、これまでの大容量から中容量サイズへ変更する。現代の世帯構成人員で大容量は新鮮なうちに飲み切るのが難しいため、新鮮なうちに飲み切ってもらう取り組みだ。
ネスレ日本は、コーヒー市場を代表するブランド「ネスカフェ ゴールドブレンド」を、初めて全製品一斉リニューアルし、より価値を高めている。コーヒー豆それぞれの特長に合わせ、徹底した時間管理と温度管理で焙煎することで、上質な香りと、すっきりした後味にした。トライアルを広げる考えだ。
味の素AGFは、同社がトップシェアのスティックカテゴリーで新たなチャレンジを行う。これは、「ブレンディ カフェラトリー」から、カフェ専門店品質にこだわり抜いた「The」シリーズを発売するもの。コーヒーユーザーが増えてニーズが多様化するとともに、外のカフェに行きたくても出かけられない人の課題を解決する取り組みだ。
キーコーヒーは、同社が強みを持つコーヒー豆のカテゴリーに、昭和レトロな喫茶店をイメージした味わいの「珈琲専門店の香り」を投入する。こだわり商品であるほど産地や味覚の訴求をしがちだが、喫茶店のイメージを前面に出した。喫茶文化の魅力を幅広い層に感じてもらうねらいだ。