大手スーパー7社の2月期 全社増益も集客力で格差
◎ライフ、イズミのみ客数増
大手スーパー7社の2017年2月期決算(単体)は全社で営業利益が改善した。ただ、イオンリテール(千葉)、イトーヨーカ堂(東京)、ユニー(愛知)の上位3社は、粗利益率改善や経費コントロールで増益を作り出しており、既存店売上高は客数の減少で揃って前期比マイナスだった。一方で5位のライフコーポレーション(東京)と6位のイズミ(広島)はともに客数を増やし、うるう年の反動がある中、ライフは4期連続、イズミは7期連続で既存店売上高を伸ばした。同じ増益でも店舗の集客力に大きな開きがあり、その格差は年々広がっている。
イトーヨーカ堂とユニーは赤字店の大量閉鎖で売上高は減少したが収益構造は改善している。イオンリテールはダイエーから営業継承した店舗が1年経ったこと、15年度に大型改装を行った店舗が利益面で貢献して増益となった。
上位3社はGMs(総合スーパー)が主力業態で、非食品フロアの低迷が長年業績の足かせになっていた。赤字店閉鎖、縮小した直営売場へのテナント導入などの荒療治で収益構造は改善しているが、3社とも客数の減少には歯止めがかかっていない。イオンリテールは4月17日から生活必需品254品目の値下げを行い、節約志向への対応で客数の回復を目指す。
一方、大型sC(ショッピングセンター)「ゆめタウン」が主力のイズミは、衣食住すべての部門の既存店売上高が3期ぶりにプラスとなった。同社はリーマン・ショック(08年)後に業績が低迷したが、食品を中心にした事業構造へ早くから転換し、一方で非食品部門はテナントと協力した売場づくりでsCの集客力維持に努めてきた。
中国・四国・九州という人口減少エリアでの展開だが、イズミの山西泰明社長は、「地方百貨店の閉鎖はゆめタウンにとってチャンス」と話す。従来は百貨店が担っていた商品やテナントをsCに取り込むことで新たな顧客を取り込んできた。近年は地域内のsM(食品スーパー)のM&Aも積極的に進めている。仕入れボリュームの拡大とインフラの効率化を原資に必需品の低価格を維持することでも客数を伸ばしてきた。同社は熊本地震で多くの店舗が被災し、特別損失を約90億円計上して最終利益は減益だったが、その他はすべて過去最高だった。
ライフも売上高、利益のすべてで過去最高を更新した。毎年10店近い新規出店を継続し、開店後2~3年の伸び盛りの既存店が多いこと、大型改装を積極的に進めてきたことが、既存店の業績を下支えした。
UsMH(東京)は既存店売上高が0・7%増加したが、客数は0・4%減少した。傘下のマルエツ(東京)は客数が0・3%増加したが、カスミ(茨城)の客数が1・3%減少したことが響いた。ライフやマルエツなど首都圏のsMは堅調だが、地方sMは環境が厳しい。カスミは当期、効率化を進めるために新センターを千葉県佐倉市に新設したが、「売上げが下振れして、新センターの経費を吸収できずにカスミは減益。マルエツの増益でカバーした」(藤田元宏UsMH社長)という。
アークス(北海道)も売上高、営業利益、経常利益で過去最高を更新した。16年2月に買収した志賀商店(スーパーチェーンシガ)と新店が売り上げを上乗せし、粗利益率の改善と経費コントロールが貢献した。既存店売上高は0・1%減とわずかなマイナス。客単価は伸長したが客数のマイナスが響いた。背景にあるのは、人口の減少と8月に北海道に3つ上陸した台風の影響だった。