宅配堅調で増収も店舗苦戦、先行投資で減益相次ぐ 主要10生協16年度決算
主要10生協の2016年度(17年3月期)決算は、堅調な宅配事業に支えられ、増収となったところが多かった。宅配は全生協で増収だった。一方で利益面では、店舗の改装やセンターの整備など、将来を見据えた投資が嵩み、減益となったところが多かった。15年度に改善した店舗事業は、競合店の増加や景気低迷による買い控えなどで、減収となったところが多かった。17年度は16年度に引き続いて、投資を継続する生協が多く、大幅な減益予算を組むところが多い。
コープみらい(さいたま市)は4店の新規出店、7店舗の全面改装を行ったこと、今年3月に大宮デリカセンター(さいたま市)を開設するなど投資が嵩んで減益となった。また、宅配事業を進化させ、従来の週1回の定期宅配のほかに、購入頻度の高い一部商品を中心に毎日注文できるシステム「いつでも注文」を実験展開してきたが、昨年6月からシステムを刷新し、対象品目を4倍の2500品目に大幅に増やした。これらの投資も嵩んだ。
一方、店舗事業は生鮮食品と惣菜を強化した改装などが効果を上げ、既存店は前年をクリア、利益面でも黒字化している。17年度も引き続き新店2店、大型改装7店などの大型投資を行うが、17年度が投資のピークになるという。
店舗事業の供給高が7・7%増と大きく伸長した大阪いずみ市民生協(堺市)は、1日3回(9時、11時、16時)の開店としてのボリューム感や鮮度感のある売場づくりを進めるなど、きめ細かな取り組みが功を奏して、既存店売上高が伸長した。また、17年3月に「コープ大野芝」を出店して13店体制になったことも売り上げを押し上げた。
コープこうべ(神戸市)とユーコープ(横浜市)、みやぎ生協(仙台市)は、店舗事業の落ち込みで減収となった。地域生協の多くは、店舗より宅配事業の方が供給高が大きいが、コープこうべとみやぎ生協は店舗中心の事業構造。近年は店舗事業の頭打ちで、宅配事業の育成に事業構造の転換を進めている。ユーコープの店舗事業は低価格路線で成長してきたが、競合店との価格差の縮小などで失速してきた。
地域生協の多くは組合員の拠点として、店舗の再活性化を進めている。改装投資を積極的に行い、惣菜の強化とともにイートインの導入などにも着手している。一方で宅配事業は、他社に先駆けて基盤を構築してきた強みにさらに磨きをかけていく。各地域生協では、太陽光やバイオマスなど再生可能エネルギーの事業へも順次参入しており、生協の思想に基づき、生活全体をサポートする総合的な事業を構築することで、独自のポジションを再構築していく考えだ。