コンビニの中華まん・おでんはなぜ猛暑期に発売されるのか ファミマ販売開始で大手3社が出揃う
ファミマの今シーズンの中華まんの特徴は、定番商品「肉まん」「ピザまん」の改良と、もうひとつの定番への育成を目指す「チーズ肉まん」の投入だ。
「チーズ肉まん」(税込み160円、9月10日発売)は、モッツァレラを主体にゴーダ、ホワイトチェダー、パルミジャーノレジャーノの4種類のチーズをバランスよく配合し、コクがあってよく伸びるようにした。チーズは食べ応えがあるようたっぷり12g使った。
チーズ以外の具材も、フレッシュ感のある生タマネギ、甘みが高い炒めタマネギ、食感がよい脱水タマネギの3種類のタマネギ、食感とジューシー感を両方感じられるよう2種類の大きさにカットした三元豚を使うなどこだわった。
定番商品はプレミアム価格帯の「極旨黒豚まん」(198円、8月20日発売)と、通常価格帯の「熟成生地の本格肉まん」「チーズたっぷりピザまん」(各130円、8月20日発売)。
ファミマの中華まんは3年前、製造を請け負う井村屋が20億円をかけて工場を新設し、全面刷新した。包餡の前に一次発酵させる専門店と同じ工程の熟成発酵生地を使い、通常価格帯の商品もプレミアム感のある中華まんにグレードアップした。
他方、プレミアム品と通常品の差がわかりにくくなるという課題があった。今年のプレミアム品「極旨黒豚まん」は、鹿児島県産黒豚100%使用、タマネギは兵庫県淡路島産で、通常品の1.5倍の肉量、具材比率50%という、通常品とは明らかな差がわかる究極の肉まんに仕上げた。
通常品も「熟成生地の本格肉まん」は豚バラ肉を加えてジューシー感を高め、冷凍タケノコを使ってエグみをなくし、甜面醤を加えて奥深い味にした。「チーズたっぷりピザまん」のチーズ16gは昨年と同量だが、ナチュラルチーズの割合を高めた。濃縮トマトを加えてチーズに負けない使いピザソースを使用。ダブルスモークベーコンを使って畜肉感も高めた。
今シーズンのおでんは、つゆの味の向上、具材への味染みの向上を図った。つゆは「昨年は焼津産かつおぶしによる先味を重視したが、今年は北海道産真昆布と丸鶏、野菜を加えて、後味まで旨味が続くように改良した」(木内智朗ファストフーズ部部長)という。味染みについては、厚揚げは豆腐を昨年より柔らかくしてつゆが絡みやすくし、だし巻き玉子は生地をふんわり巻くことでつゆを浸み込みやすくした。だいこんはつゆと相性の良い野菜と魚介を加えた調味料で下味をつけた。
ファミマのおでんつゆは、北海道・東北では貝や焼干しの旨味を足し、九州ではアゴ(飛魚)・牛・鶏・冬茄を加えて甘めにするなど、7地域に分けて味つけを変えた。セブン-イレブン・ジャパン、ローソンのおでんつゆは、さらに細かい全国を9地域に分けて味つけを変えている。
また、ファミマでは原材料の配合見直しなどで、中華まんの販売可能時間をスチーマーに投入後6時間から7時間に延長した。おでんも具材によって5時間~15時間の販売可能時間をそれぞれ1時間延長した。おでんはパッケージに、鍋のどの位置にどの具材を入れるべきかの推奨配置図を記載した。廃棄ロスの削減と店舗のオペレーション負荷の低減も図られている。
〈コンビニの中華まん・おでんはなぜ、猛暑のこの時期に発売されるのか〉
大手コンビニがこぞって、暑さがピークのこの時期に中華まん・おでんを発売する理由について、ファミリーマートの木内部長は、「お盆を過ぎると、量販店の売場が夏物から秋物に代わる。鍋のコーナーもこの時期から登場し、お客様も、そういったものが食べたいという気持ちになってくる」と話した。
ファミマでおでんが最も売れるのは、真冬ではなく10月。単に気温が低い時ではなく、前日と比べて大きく気温が下がった時が、最もおでんの売り上げが伸びるという。
秋口に急に気温が下がった時に、「そういえばコンビニにおでんがあった」などと思い出してもらうには、お盆ぐらいの時期から販売を始めて、顧客に認知してもらう必要があるという。