百貨店、最大商戦・歳暮の苦境を“食”で乗り切る動き 軽減税率を活用、「家庭で贅沢」提案

そごう横浜店では試食も行い、鍋ギフトを売り込む
百貨店各社の2019年の歳暮ギフトは、年末年始に家族や友人たちと自宅で過ごすシーンを提案する動きが顕著だ。

10月の消費税増税以降、外食が落ち込んでおり、自宅でパーティーなどを行う家庭が増えると想定したためである。一方、百貨店各社も増税前は高額品を中心に駆け込み需要の恩恵を受けており、10月以降は反動による売り上げの大幅な落ち込みに苦しんでいる。軽減税率が適用された「食品」が百貨店にとっても頼みの綱で、「歳暮」「催事」「クリスマス」「おせち」と続く年間最大商戦を、「食品」をフックに必死に乗り切ろうとしている。

主要百貨店の10月の売上高は駆け込み需要の反動に加え、台風19号による臨時休業の影響も受け、前年同月比で2割前後落ち込んだところが多かった。軽減税率、キャッシュレス決済によるポイント還元など、わかりにくい今回の消費税増税。一般顧客には、外食や酒類などの贅沢品は税率10%、一般的な食品やテイクアウトは税率8%ということは案外浸透していない。

百貨店が扱う食品は比較的高額で、日常的に食べるものというより、ハレの日の「ご馳走」で贅沢品というイメージが強い。歳暮やおせちなどは特にそのイメージが強く、松屋銀座本店の食品バイヤーは、10月上旬に社内で行われた外商担当者への歳暮のプレゼンで、「歳暮もほとんどの商品が税率8%だということを、顧客にしっかり伝えてほしい」と話した。

増税以降、消費マインドは停滞しており、節約志向も高まっている。外食の落ち込みも、単に消費税が引き上げられたからだけでなく、外食そのものの回数を控えようという心理が働いている面もある。百貨店各社では2%分のお得感を活かし、歳暮では「家庭で贅沢を」という切り口を強化している。松屋は「家庭でレストランや料亭の味」、京王百貨店は「ワンランク上の朝食」、高島屋は「自宅でゆっくりティータイム」というテーマで訴求する。そごう横浜店では、家族や友人が集まる年末の鍋需要を狙い、地元・神奈川の食材を使った独自の鍋ギフトを企画。ギフトセンター開設初日には試食も行い、顧客に訴求した。