神戸港開港150年 独自の食文化を創造 食都神戸目指す
今年1月1日、神戸港は開港150年を迎えた。1868年に門戸を開いて以来、諸外国と交流を重ね、創造性に富んだ独自の文化を築いてきた。とりわけ食品企業は優良企業が多く、本社も神戸のままにするなど、地元愛に満ちている。「都会でありながら海と山が近い風光明媚な環境はほかにはない」(地元企業)ことから、ネスレやプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)など外資系企業も拠点を構えている。食文化の豊かさについても特筆すべきものがあり、洋菓子に紅茶、缶コーヒーなど、日本で初めて取り入れたものは枚挙にいとまがない。(3~12面に関連特集)
神戸といえば、「観光都市」「国際港湾都市」「ファッション都市」として全国に知られている。やはり港や異国情緒、お洒落なファッションのイメージが強いだろう。だが、欠かせないキーワードは何と言っても食文化である。
中でも「神戸スイーツ」「灘酒」「神戸ビーフ」は3大ブランドといってもいいほど全国的に有名だ。日本酒を製造する酒造メーカーは全国に大小合わせて千数百社あるが、灘酒と言われるお酒を造る灘エリアに蔵を構える27社で約30%のシェアを占める一大生産地だ。神戸ビーフはアジアを中心に海外での人気も非常に高く、それを目当てに訪れる観光客も後を絶たない。
食品メーカーでは、世界初のミルク入り缶コーヒーを発売したUCC上島珈琲や、スライスチーズをいち早く商品化した六甲バター、とんかつソースを日本で初めて開発したオリーバーソースといった業界でパイオニア的な存在の企業が目立つ。
エム・シーシー食品の水垣宏隆社長によると、「海と山に挟まれた、制限された狭い土地で発展してきた。欧米の食文化、海外の味を150年かけて受け入れてきた。それが外食店の繁栄や加工度の高い食品メーカーの隆盛にもつながっている」とその理由を述べる。それとともに、「海外の食を味わいながら、神戸人は味覚を向上させてきた」とも指摘。150年前から世界各国の多様な食を取り入れてきた柔軟性と、舌の肥えた市民によって、これだけの食文化が育まれてきたといえよう。
行政の取り組みにも注目だ。神戸市は、今年1年を通じて「神戸市開港150年記念事業」を展開しており、神戸の港と海をイメージした記念ロゴマークを作成した。地元の食品メーカーはこのロゴを用いて記念商品を続々と発売している。
さらに東京オリンピックが開催される2020年に向けて、2015年からは「食都神戸2020」プロジェクトを推進している。神戸市は近畿で農業生産額3位と実は農業も盛んだが、その認知度はあまり高くない。そこで「国際港湾都市」や「ファッション都市」という神戸の華やかなイメージと絡めた食の発信を行うことで、世界中の人々が訪れ、食でにぎわう街の構築を目指す。