五輪施設での飲食提供のあり方、基本戦略を提示/東京2020組織委員会

「月刊メニューアイディア」2017年10月号(日清医療食品特集号)
東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(東京2020組織委員会)が事務局を務める「飲食戦略検討会議」(座長=大久保洋子和食文化国民会議調査・研究部会副部会長)の最終会合が9月13日に開かれ、五輪・パラリンピック関連施設での飲食提供のあり方に関する「基本戦略(素案)」が了承された。

素案ではアスリートに対する栄養面でのサポートや食品安全のほか、環境面や労働安全衛生への対応など「持続可能性に配慮した」運営上の取組みが提示されるとともに、日本産食材の積極的な活用や「おもてなし」を含めた日本食文化の発信・継承についても積極的に展開していく考えが示されている。

12月初めに国際オリンピック委員会(IOC)と国際パラリンピック委員会(IPC)に提出し、17年度中に正式文書が公表される運び。今後、基本戦略に基づき、メニュー提案や飲食に関わる予算などが決められる。メニューの内容が定まれば、調達すべき食材の全体像が明らかとなる見通しだ。「飲食提供に係る基本戦略」は、「参加選手がコンディションを維持でき、競技において自己ベストを発揮できる飲食提供を実現する」ことを目的につくられるもので、大会の基本姿勢である「持続可能性」を大前提に内容がまとめられた。

食品安全については、国際規格による第三者認証の取得を促すほか、食品防御も想定した取り組みにも言及。一方で、HACCP義務化が大会開催時に間に合わない中でHACCPの取り組みを参入条件とすれば、中小事業者をはじめ必要な数のサプライヤーを確保できない事態を招きかねない。こうした不都合を想定したうえで、「可能な限りHACCPによる衛生を求め、食中毒の未然防止を図っていく」という内容に留めている。また、食中毒対策として、保健所との連携を密にしていくことにも触れられている。過去の大会では、飲食提供に関するノウハウを蓄積したデータがなく、今回の東京大会を含め主催国が手探りで、食材調達や飲食提供を実施してきたのが実情だ。こうしたことから「(次の大会につながる)レガシー(遺産)」として、大会運営のノウハウや足跡を記録するとともに、世界に向けて情報発信していくことも、2020東京大会の特徴的な取り組みと考えられている。

委員からは「食品ロス削減や認証取得の動き、国産食材の比率など、リオ(デジャネイロ)など過去の大会で明らかにされなかった事実についても、情報公開していくべき」との声も上がっている。

〈月刊メニューアイディア2017年10月号(日清医療食品特集号)より抜粋〉