〈新春座談会2018〉学校給食用食品メーカー協会 大沼会長・清水副会長、全国学校栄養士協議会 長島会長〈2〉

全国学校栄養士協議会 長島美保子会長
〈長い人生を豊かに生きるための食育〉
――子供たちの食事情の現状や課題とは?

長島=子どもたちを取り巻く社会環境の変化の中で、朝食欠食や偏った栄養摂取による食習慣の乱れはもちろん、食生活に起因する生活習慣病の低年齢化や食物アレルギー等が大きな課題となっています。また、食の安全性の確保や食糧自給率の向上、食品ロスの削減、そして食文化の継承など、国民として克服していかなければならない社会課題が山積みしています。

人生100年時代の到来が予測されていますが、今の子どもたちが、この長い人生を豊かに生きていくためには健康寿命の延伸を視野に入れ、現状の課題の解決に向けて努力していくことがとても重要です。

別の側面から見ると、子どもの貧困に伴う不十分な食生活も問題視されています。実際、学校給食にはそれらのセイフティーネットとして機能している面もあります。

いずれにしても、わたしたち学校給食関係者は、子どもたちの幸せな未来のために力を注いでいくことが重要と考えています。

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学校給食用食品メーカー協会 大沼一彦会長

学校給食用食品メーカー協会 大沼一彦会長

大沼=国全体のことを考えたとき、老人が多くなり医療費がかさんで国も財政ももたなくなります。何が重要といって、健康でいられる、病院にかからない、70歳くらいまで働ける身体が重要です。20歳くらいまでに基礎がつくられます。こうした観点を考えた場合、学校給食の段階で「健康」をキーワードに栄養バランスや減塩など、メーカーとしても負担にならないようにサポートしていく必要があります。

小学校、中学校、そして高校までが身体作りに欠かせないのであれば、そこにお金がかかっても、あとでお金のかからないやり方の方が結局は得策ではないでしょうか。

長島=人生100年時代に健康寿命を伸ばす必要があります。成長期の健康を基盤として、自分たちの食の力をもって健康寿命が延びていくような努力も必要です。

清水=女性の社会進出等で、家庭における栄養バランスの摂取が難しくなりました。それを学校給食が支えています。いま学校給食の価値観が上がってきていて、子供の成長には大きい。調理は素材からつくるのが1番いいかもしれませんが、メーカーの商品を上手く使うことも大事と思います。昨年も食品の供給量は増えており、メーカーの商品開発の責任は大きくなっています。

学校給食用食品メーカー協会 清水誠三副会長

学校給食用食品メーカー協会 清水誠三副会長

清水=女性の社会進出等で、家庭における栄養バランスの摂取が難しくなりました。それを学校給食が支えています。いま学校給食の価値観が上がってきていて、子供の成長には大きい。調理は素材からつくるのが1番いいかもしれませんが、メーカーの商品を上手く使うことも大事と思います。昨年も食品の供給量は増えており、メーカーの商品開発の責任は大きくなっています。

東京都は単独校が多かったので、冷凍食品はなかなか使っていただけませんでしたが、このところご使用いただけるようになってきたことは大きな変化だと考えています。

長島=冷凍食品を知る機会は少ないので、メーカーさんの的確な情報は必要ですね。

大沼=「加工食品は悪い」というような感覚はやはりおかしいものです。

長島=私の学校は小さな現場だったため、たいていは手作りをしていましたが、やはりそこまではできないメニューもあって、加工食品を使うことで余力のあるものが作れる。そういう意味で、よいお付き合いの仕方ができればいいなと考えています。加工食品=手抜きというような誤解が生じないようにしていくことも重要です。

清水=リニューアルしたHPをいかに見ていただくか大事ですね。

長島=栄養士の皆さんも若くなってきましたので、HPへ簡単にアクセスできるようになりました。情報入手の手段としてちょうど「新しいものを考えたいな」というときにはとても活用しやすいです。

〈栄養教諭の成果を示す〉
――今年の抱負などは

大沼=ワーキングチームと全学栄様とがいかに密着していけるか、HPだけではなく様々に頑張っていきたいと思っています。

長島=栄養教諭が配置されてから12年が経過しました。栄養教諭が子どもたちや保護者、または地域社会に働きかけることによって、何が変わったのか、配置の効果を科学的に分析して示すことができる力を身につけるよう、会員のスキルアップを図る1年にしたいと考えています。

また、本会が作成している食育の指導書には、小中学生の時期にこれだけは身につけて欲しいという食に関する知識や実践力を育む食育の教科書としているところですが、全国の学校において、これを広く活用した食育が行われるように働きかけていきたいと思います。

〈小中学校の給食は義務化し無償化へ〉
――日本の学校給食のあるべき姿や夢について

大沼=国の将来を背負っている児童は大切です。学校給食に対して、国も予算を計上する必要があると思います。

学校給食の質が更に向上することは、日本の農水産物を使う頻度も大きくなることにもつながります。その意味では、高校まで無償化していくことが、結果的に国を豊かにするわけで、原点はそこにあると考えています。

長島=昨年度は、台湾の学校給食関係の皆さんの視察を受けました。

日本の学校給食は、教育課程に位置づけられた教育活動の一環として行われています。戦後からの給食制度で、短期間に子ども達の栄養状態も改善されました。また、学校給食を通して、栄養や食に関する様々なものを学び、身につけています。世界に冠たる日本の学校給食との評価を頂いたところであり、たいへん誇りに思っています。

ただ、食育の推進と言いながら、中学校で給食を実施していない学校もまだあります。そこでは栄養教諭や給食に触れることもありません。埋められない格差があります。現在、90.2%の実施率となり、概ね100%に近くなれば給食が義務化されることにつながるでしょう。それはそのまま給食費の無償化につながっていくもので、教科としての食育が入ってくることにもなると期待しています。

清水=今の子供たちもやがては親になっていきます。次の子供たちのためにも食育は重要です。中学校の給食実施は保護者も望んでいます。もっと拡大をしていただきたい。

大沼=高齢社会をスムーズにしていくためにも、核家族化が進む中、学校給食の無償化は健康や安心につながっていきます。そしてまた、子供に対してバラツキがあってはいけません。どこにお金をかけたらいいのか、国の予算配分を転換する時期に来ている気がします。

〈給食雑誌 月刊メニューアイディア 2018年3月号より〉

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