〈新春座談会2018〉学校給食用食品メーカー協会 大沼会長・清水副会長、全国学校栄養士協議会 長島会長〈3〉
――中学校の「まずい給食」が問題になりました
長島=行政による厳しい衛生管理があり、冷まして提供する指導もあったために冷たい状態で出された結果、食べにくかったという話を聞いています。
自治体と委託業者がよく話し合っていかに美味しく食べられる給食にするのか、前向きな検証をしていってほしいと思います。限られた給食費という問題はありますが全て未来を担う子どものためです。
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学校給食用食品メーカー協会 清水誠三副会長
清水=いくらカロリー計算をしても、子供たちが食べてくれなければ意味はありません。衛生問題は最低限必要ですが、いかに喫食率を高めるかを忘れてはいけません。メーカーができることは限られています。
――日本食については
長島=ユネスコの無形文化遺産として「和食」が登録されたことは大変喜ばしいことだと思います。「和食」とは、単なる「一汁三菜」といった日本食の形や料理のみを指していません。日本の四季折々の気候風土に恵まれた豊かな食材に、自然の恩恵や信仰、地域の特徴的な文化を背景に育まれてきた、いわゆる精神文化に裏打ちされた奧の深いものと思います。
これを、子ども達にどう伝えるか。子供は洋食指向が強いので、日本食をきちんと正しく継承していく必要があります。日本古来の豆なども教えていく必要があります。和食は四季折々の中で食文化に支えられ、次世代に伝えていくのも給食の役割かと思います。学校給食を教材として子どもへ、家庭へ伝えていく。単に行事食・郷土食のみではなく、だし・味・魚の骨のはずし方・はしの使い方など、包含した広い視野で伝えていく必要があると思います。
学校給食用食品メーカー協会 大沼一彦会長
大沼=和食にこだわらず、むしろバランスが大事なのではないか。健康にはいろいろなものを食べないといけません。
長島=これからは国際社会の中で生きていくので、おおらかな食生活も大切です。世界の味めぐりなど、月に1回提供されている学校は案外多いのです。
清水=和食は非常にバランスの良い食スタイルです。野菜も多く取れ、様々な調理法があり、欧米は単品で大量という感じなのでベジタリアンが多いのも反動と言われています。ただ日本人の体躯が多少小さいことを考慮すれば、和食は炭水化物が多いのでもう少しタンパク質を摂ったほうが良いのかもしれません。
長島=日本人に合った食事の摂取基準は定められており、学校給食摂取基準も成長発達段階を考慮して示されています。
〈アレルギー対応は皆の力で向上〉
――地産地消については?
長島=地域に根ざした学校給食が望まれています。地元食材を使い、子ども達に身近で喜ばれる献立内容で、それを郷土学習につないでいます。また、国内の他の地域の献立を実施することもあり、たとえば「学校給食甲子園大会」入賞の郷土料理が他の地域の給食にのぼることも予想されます。
現在も行われていることですが、今後もますます地域色豊かな給食が実施されていき、献立研究も行われていくと思います。
大沼=地産地消の食材を1品2品入れることは地域を知っていくには必要で、生産者の苦労を知ることも大切なので良いと思います。
清水=地域の食文化を支えるので重要ですが、メーカーが生産する場合は小ロットにはなりにくい。混タミ問題もあります。卵1つとってみても、国産が今のところ精一杯の場合も出てきます。
――最近ではアレルギー問題がクローズアップしています
大沼=当社の話で恐縮ですが、「フレンズスイーツ」シリーズのコンセプトは、“皆で一緒のメニューを楽しく食べよう”といったもので、現場サイドで混タミ問題もあり、本当にお手伝いできる商品とはどのようなものなのかを一緒に考えていきたいと思います。
長島=対象となる児童生徒が増えてきています。様々な種類のアレルギーが増えています。メーカー側の食品開発の力が期待されています。クリスマス、七夕、行事食…自分だけ違うという思いをさせたくない、皆と一緒に食べさせたいという思いで、その子だけ特別にしないといけないので手作りで出すこともありました。
清水=当社もアレルギー対応の調味料を出したところ、美味しいと評判になり、大変喜ばれてヒットしました。
長島=複雑な調理対応の必要もあり、どうしても価格高となるために今後いろいろ考えていかなければと思います。
〈給食雑誌 月刊メニューアイディア 2018年3月号より〉
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