受託給食企業4社による保育園給食の取組み/日本給食サービス協会主催セミナー(3)
私は品質管理部安全衛生推進室に所属しており、全国の受託先保育園・学校を訪問し、衛生面や食物アレルギーの対応など運営面でのサポートを行っている。各ブロックでの食育の取り組みの中から、情報ツールやアイディアを共有した食育の好事例を紹介する。
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〈幼稚園教育大会に出展して委託化を提案〉
まず、北陸東海ブロックでの私立幼稚園教育大会で実施した委託給食の取り組みを紹介する。同大会は理事長先生はじめ園長先生、幼稚園教諭、保育士、保護者の方々、総勢2,000名が参加する大きなイベントで、受託している園から声をかけていただき当社は参加した。
イベント会場に1×2mのブースを設け、「現在の給食の運営はスムーズですか」、直営の保育園来場者には「委託化を検討されていますか」と声を掛けて、自社の取り組みをアピールした。ホームページに掲載している受託先の園長先生の感想コメントに関心を持たれ、委託給食のイメージをつかんでいただけたようだった。
ブースには食育グッズも掲示した。手のひらに、ばい菌を表した毛糸の玉を置いて、石けんの泡でばい菌を落とすことで、手洗いの重要性を伝えた。
手洗いの重要性を伝える食育グッズ
〈保護者向け離乳食教室を開催、全国で情報共有〉
続いて、石川県の私立のこども園で行った離乳食教室について紹介する。同施設に併設している地域子育て支援センターで、8人程度のお母さんたちを対象に講座を実施。季節の食材を知り、美味しく食べる方法や、月齢に合った食材を選び、アレンジする方法を伝えて、家での離乳食との違いを確認していただいた。会話では、緊張をほぐしリラックスしてもらえるよう工夫し、家庭での様子をじっくり聞き、受け入れ、共感しつつ、質問に答えることを心掛けた。お母さんたちの中には、「こんなしっかりした離乳食は初めてです」との感想もあったが、味付け、調理法などの栄養面でのアドバイスを行うことで、不安もやわらぎ納得されている様子が伺えた。
イベント後、岩手県の保育事業所担当の係長から問い合わせを受けた。自分たちの地域ではまだ離乳食教室を開催した事例がないので情報が欲しいと言われたので、岩手県の栄養士に石川県での情報の橋渡しをし、お互い連絡を取り、教室開催までの準備や心構え等を伝えてもらった。
〈アイディア満載!給食室発信の食育の掲示物〉
最後に、長野県の幼保園・こども園で実施した給食室からの食育の取り組みを紹介する。公立の園では栄養士が常駐されていない事も多いため、調理師が中心となり、食育の掲示物を作成した事例です。調理業務を主とする現場だからこそできる“ 給食室発信の食育”にこだわった。
例えば、給食室に近い壁面には、年間の行事食と食材をイラストで掲示している。
ポスター「1日の食材をみてみよう」は、食材の写真を撮って作成した。「野菜がみんなのお口に入るまで」は、畑からとれた食材が業者から運ばれ、給食になって口に入るまでを表現している。1つの媒体を作るにも時間がかかるため、食育を積極的に進めるためには、勤務時間の中できちんと「食育に費やす時間」をとり、計画的に進めている。
一番のヒット作は「やさいのおなか」だ。野菜や果物を縦や横から切った断面を「やさいのおなか」として紹介している。
一番のヒット作「やさいのおなか」
調理員は「いつも子どもたちの声を側で聞いているから、どんな表現が一番喜ぶかをイメージしながら作成している」という。子ども目線ならではのアイディアだ。当社における学校保育のモットーは、「『おいしかった=好き』になる給食」である。子どもは、給食で生まれて初めて口にする味・料理が多く、「おいしかった」は、“その食べ物が好き”という意識に直接つながる。食べられる食材が増えることは、栄養面からの体の成長はもちろん、豊かな心の成長にも大きく関係する。これからも、「おいしかったよ」の声が聞こえる安全・安心な給食を目指し、取り組んでいく。
〈給食雑誌 月刊 メニューアイディア 2018年4月号より〉
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