集団給食協会が栄養士体験発表会を開催、テーマは「集団給食が生み出す食文化」

左から馬渕副会長、岩見会長、朝岡教授、熊倉さん、勝又さん、増田さん
集団給食協会(会長:岩見竜作レクトン社長)は8月21日、「集団給食が生み出す食文化」をテーマに栄養士体験発表会・講演会・パネルディスカッションを東京ガーデンパレスで開催した。

学校給食、事業所給食、メディカル給食について、会員3社が自社の取り組みを発表。その後、「集団給食の未来」と題して、東京農工大学農学研究員の朝岡幸彦教授が講演、岩見会長をコメンテーターに、発表者によるパネルディスカッションも開かれた。約180人の参加者は、創意工夫・業務改善の取組みを学び、資質向上の機会とした。

〈学校給食、事業所給食、メディカル給食の画期的な取り組み〉
シダックスコントラクトフードサービスの熊倉里美さんは、高校生を対象に実施した食育講座の効果について発表した。受託先高等学校から「午前中に間食を食べる生徒が増えたので食育をして欲しい」と要望を受け、生徒約480人に『バランスの良い食事と朝食の重要性』について講義を行い、野菜不足の生徒が多いことから、朝食に栄養バランスの良い具沢山汁を提案した。その結果、朝食の摂取・選択と午前中の間食の選択が改善。熊倉さんは「自ら食事を選択する高校生への食育は有効であり、“選食力”を養うために必要な教育である」と強調した。

フジ産業の勝又久美さんは事業所で実施した健康フェアの取り組みを紹介した。昼食の提供とあわせて、血管年齢とストレスチェックを測定する機会を提供するとともに、食事のとり方や栄養指導を行った。現場からは「血管年齢の結果が悪かった方が積極的に改善策を聞いてきた」「数値で一喜一憂するお客様の姿が印象的」などの意見が挙がり、勝又さんは「サービスの継続が生活習慣病の予防や健康づくりの動機付けにつながる」と語った。

富士産業の増田有里子氏は、病院給食における「誤配膳防止の工夫と対策」について講演した。誤配膳のヒューマンエラーが起きる背景を、個人対応・食事内容の多様化、人手不足、個人の力量の低下、栄養士の負担の増加、得意先からの意見・要望――であると分析。個別対応や食形態の簡素化を図るとともに、カット野菜、冷凍野菜、完調品や加工食品の導入などを実施。食数ボード記入方法を統一し、分かりやすさも向上させた。その結果、仕込み時間が1日あたり3時間から45分に、総労働時間が1日あたり60時間から50.5時間に短縮し、月30件以上の配膳間違い・遅れが月0件になった。増田さんは「従業員の高齢化と人手不足はさらに深刻化する。働きやすい環境作りは不可欠であり、業務内容の簡素化や個別対応の幅の見直し、厨房機器や調理システムの見直しも重要である」と更なる業務改善に意欲を示した。

朝岡教授は「集団給食を食べる方は時間的・空間的に閉じた人々の集団であり、目的をもって集まっている人たちが特別な食事を継続的に“ともに食べる”という意味合いがある。共食は、“おふくろの味”に象徴されるように、食事や食材の作り手が容易に想像できる関係性、即ち、信頼関係の存在が前提になっており、安全・安心な信頼関係こそが食の原点である」と集団給食の主旨を説明した。その上で「世界がグローバル化する中で、“ともに食べる”を集団給食のキーワードとし、業務の効率化を図りながら信頼関係の構築に取り組み、頑張ってもらいたい」と期待をかけた。

〈岩見会長「給食は人を幸せにする仕事であり、食文化を作る役割もある」〉
岩見会長は会員3社の発表を受けて「それぞれの立場で栄養業務に携わり、一生懸命に創意工夫をこらした内容だった。お客様や食べていただいている方にどう向き合っていくのか、人手不足の中で労働生産性を上げつつ、いかにお客様満足度を向上させるか、こうした課題が見えた内容だった」とコメント。

そして「食は、人を笑顔に、健康に、人と人をつなげるものだ。給食は人を幸せにする仕事であり、食文化を作る役割もある。集団給食の未来は、我々がそのような役割を胸に、誇りを持って仕事をすることで得られるものではないか」と呼び掛けた。

〈冷食日報 2019年8月26日付〉