SC集客の柱にフードコート
▽コト消費を掴む進化で魅了、臨場感あふれる店舗に行列
商業施設の集客の要として、いま最も注目を集めるのがフードコート
だ。臨場感溢れるオープンキッチンから出来上がる料理は専門店にも負け
ない本格派で、ファミリー層から1人客まで対象とするシチュエーション
に応じた多様な客席は居心地の良さを提供している。ショッピングの合間
の空腹を満たす場から、五感を満たす場へとフードコートは大きく進化を
遂げている。
7月のとある土曜日午後6時。鳴り響くジャズのリズムに合わせ手拍子をする人で溢れるこの会場は、ジャズバーでもライブハウスでもなく、都内近郊にあるショッピングセンター(sC)内のフードコート。「イオンモール幕張新都心」(千葉市)では土曜日夜に、フードコートで入場・観覧無料のジャズライブを開催し、ファミリー層にとどまらない中高年層やシニアなど新たな客層の誘引に成功している。一方、「ららぽーと海老名」(神奈川県海老名市)内にあるフードコートは夏季期間、17時以降はビアホールへと様変わりし、海老名駅を利用するビジネスパーソンの飲酒需要を取り込んでいる。
▽客席も多様化、五感を満たす場へ
モノ消費からコト消費へと変化する中、ショッピングセンター内のフードコートはここ数年で、大きく進化した。小さな子どもが楽しめる滑り台を設けたキッズパークを併設させるなど、主要ターゲットであるヤングファミリーを意識した空間づくりはもちろん、子育て世代にとどまらないシニアや一人客などあらゆる世代・シチュエーションを対象に、エリアの立地特性やマーケットニーズに合わせ、フードコートの充実を図っている。
入居するテナントについては手作り、出来たて、実演性を売りにするオープンキッチンを採用した業態が人気だ。調理工程を見学できるように工夫されており、待ち時間に本格派の料理を目や耳で楽しむことができる臨場感あふれる業態に行列ができている。トリドールジャパンの「豚屋とん一」、クリエイト・レストランツの「ローストビーフ星」、ペッパーフードサービスの「いきなりステーキ」といった業態は、いずれも実演性で需要を掴んでおり〝わざわざ行きたくなる店舗〟としても話題だ。sCの集客力の一端をそれらの業態が担っている側面もあり、いずれもデベロッパーからの出店オファーが後を絶たない。
少子高齢化や自家用車の保有台数の減少などを要因に、郊外型sCが頭打ちとなる中、今後、駅近物件などsCの都心回帰が進むと見られる。フードコートについては新規性、話題性に富んだより強い集客力を持つ業態誘致が必要となり、前述の飲酒需要の取り込みなど、新たな需要創出も必須となる。生き残り策の一つとしてもフードコートの充実は欠かせなく収益、集客の柱として今後もフードコートの躍進は続く。