外食各社が人材への投資を活発化 定着率向上、“選ばれる職場”目指し働き方改革も
〈「ハブ大学」設置が奏功、7%の低離職率を実現/英国風パブ「HUB」〉
都内繁華街にある英国風パブ「ハブ」のとある店舗。外国人客の来店に流暢な英語での接客対応を始めたのは、クルー(アルバイト)の女性従業員で、制服には「English OK!!」の文字が書かれたバッジが、きらりと光る。都内や地方都市に「ハブ」を約100店舗展開する同社は、今年からTOEIC700点以上のクルーを対象に英語能力を時給に反映させる施策を始めた。「クルーのやりがいや誇りにつなげる施策として英語能力の見える化を図った」(同社)。時給アップは10円だが、クルーの承認欲求を満たすことが重要だという。教育機関『ハブ大学』の設置が功を奏し、外食産業の平均が3割程度の中、7%前後と社員の離職率の低さで知られる同社は、“英語”をフックにクルーの採用強化、定着率アップにもつなげていく。
「English OK!!」のバッジを付けた「HUB」のクルー
〈「マネージャートレーニングコース」で年間30人のクルーが正社員に/すかいらーく〉
約10万人のクルーが働くすかいらーくでは、クルーから店舗限定で店長として正社員に昇格できる「マネージャートレーニングコース」を4年前から設置。年間約30人程度が同コースを修了して、クルーとして働いていた店舗で店長に昇格している。現場で働いていた実力と信頼のあるクルーが店長に昇格することで、店舗の統率力アップと、地域の活性化にもつながっているという。
すかいらーくが導入している動画マニュアルは外国人クルーにも好評
〈接客・製造のコンテストでモチベーション向上/日本マクドナルド〉
一方、日本マクドナルドには、約14万人の店舗で働くクルーが、大いに盛り上がる一大イベントが年に1度あるという。クルーのスキルを向上させるトレーニングの一環として毎年開催する「AJCC(オール・ジャパン・クルー・コンテスト)」で、レジでの接客やハンバーガーの製造などポジショニングごとにトップを決めるもので、毎年多くのクルーが参加する。
40年以上にわたって実施するこの取り組みは、クルーにとってお互いのスキルを高めることのできる絶好の機会で、モチベーションの向上にもつながっている。
こうした単なる働き手としてだけでなく、働きがいにつながる施策や個人としての成長が可能な人材育成の場の構築が、外食各社の人材確保には欠かせない。前述のすかいらーくでは新卒が70%、中途社員はほぼ100%がクルー出身者で、日本マクドナルドも新卒の75%がクルーとして働いた経験があるという。クルーへの投資が、優秀な社員確保にもつながっており、両社とも動画を活用したマニュアルなど教育ツールの充実を随時見直し、より働きやすい職場づくりにもつとめていくとした。
〈「ロイヤルホスト」営業時間短縮に着手、年3日の店休日も/ロイヤルHD〉
従業員の働き方改革、生産性向上へと大きく舵を切るのは、ロイヤルホールディングス。同社の菊地唯夫会長は以前開催された外食企業向けのセミナーでこう語っている。「お客様の胃袋が減るより働く人が減るインインパクトのほうが大きい。働く人を確保できない企業は、撤退も余儀なくされていくだろう。働きやすい職場を作ることが、市場への生き残りの条件になる。そのための働き方改革と生産性向上だ」。
ロイヤルHDは「LINE Pay」によるセルフテーブル決済を導入、生産性向上を図る
同社の主力業態「ロイヤルホスト」(約220店舗)は昨年から営業時間の短縮に着手し、今年は年3日の店休日も設けた。働く環境を整備することで、ホスピタリティサービスレストランとして付加価値の向上につなげていく意向だ。各社の追随に注目が集まる。