「とんかつ浜かつ」“専門店の味”強みにテイクアウト強化、弁当専用容器の保温性を向上
同事業の代表を務めるリンガーハット専務の八幡和幸氏は、「ディナー主体のレストランとして成長してきた当社が収益拡大策の一環として強化したのがテイクアウトだ。スーパーやコンビニには出せない専門店の味を強みに、専用容器をさらに進化させ揚げたてのおいしさで提供する。伸長する中食需要を掴み、売上確保に繋げていきたい」と話す。テイクアウト売上占有率は現状10%弱だが近い将来、15%強まで拡大したい考えだ。
リンガーハット専務 八幡和幸氏
――「とんかつ浜かつ」の概要とテイクアウト強化の狙いは
1962年に長崎で創業した「とんかつ浜かつ」は、西日本を中心に全国に102店舗を展開しているとんかつ専門店。670店舗以上を展開するちゃんぽん専門「リンガーハット」の創業業態で、「リンガーハット」同様、肉のカットやソース、ドレッシングの製造は自社工場で行い、使用する野菜、コメ、小麦は全て国産で新鮮かつ安心安全な食材にこだわっている。ごはんは「白米」と「黒米入り麦ごはん」など、ごはん、味噌汁、キャベツはそれぞれ2種類から選択でき、漬物を加えた上記4つは全ておかわり自由だ。こうした食材へのこだわりやお得なサービス、“おもてなし”を意識した接客は、お客様から高い評価を得ており、日経BP社発行「日経トレンディ」2018年6月号の全国200外食チェーン「消費者満足度ランキング」において、総合満足度1位を獲得している。
「とんかつ浜かつ」は食材や内装にこだわり、ディナーを主戦場に長年、成長してきた。地方のロードサイドでは回転すしチェーンの攻勢など競争激化が進んでおり、収益拡大策の一環として、ランチメニューの拡充やデザートビュッフェの導入とともに、強化したのがテイクアウトだ。20年以上前から持ち帰り商品は販売していたが、中食需要も高まる中、本腰を入れて注力し始めたのは17年3月からで、専用メニューや専用容器を導入する大幅刷新を行った。
メニューは、ロースかつとチキンかつの詰め合わせ「浜かつ弁当」(税抜き690円、以下全て税抜き)や、ヒレかつ・ロースかつ・コロッケの3種が入ったテイクアウト限定「ミックスかつ弁当」(790円)などそれまでなかった1000円以下の商品を充実させた。また「浜かつのおいなりさん」(3個入り・300円)などのオリジナル商品やオードブルなども導入し随時、ニーズに合った商品へと改廃を進めている。
容器は、「お弁当でも出来立てのおいしさを提供したい」との想いから、弁当用に専用のものを開発した。芝浦工業大学デザイン工学部監修のもと3年の開発期間を経て、商品化したもので、ごはんの蒸気で上段のとんかつを保温する「二弾重ね」の容器は、購入後約30分は温かく食べられる。
――12月から専用容器がさらに進化した
専用容器はさらに改良を重ね、第二弾として蒸気を吸収する特殊紙と保温パックを新たに加えた新容器を開発し、12月7日から全店への導入を開始した。特殊紙を上蓋に使用することで、温かいままとんかつの食感を向上させた。大麦を使った保温パックは、電子レンジで温めることで、60℃以上での保温が30分間可能になった。温めた穀物の保温効果に着目し、ごはんに大麦を使用している繋がりから、大麦を保温パックに採用したもの。新容器は浜かつ完全オリジナルで現在、特許出願中だ。
――今後の展望を
将来的には現状、10%弱程度のテイクアウトの売上占有率を15%強まで拡大していきたい。我々の強みは、保存料・合成着色料不使用、添加物をできるだけ使用しない安心安全なおいしさ。弁当の売れ筋2トップは「浜かつ弁当」と1690円の「浜かつスペシャル弁当」で、価格レンジの広さにも魅力を感じていただいており、店内飲食同様、選べる楽しさ、できたてのおいしさを訴求しテイクアウトの拡大に注力していく。
宅配やドライブスルーについてはかつてチャレンジしたが、人手不足をネックに需要はあっても拡大することができなかった。「出前館」や「ウーバーイーツ」といった外部の宅配サービスが充実してきており、活用することで宅配の需要も獲得したい。
来年には軽減税率の導入を控えており、今後、テイクアウトへのニーズはさらに高まる予想だ。「リンガーハット」でも専用容器の導入を検討しており、グループ全体でテイクアウトの需要獲得に向け、本腰を入れて取り組んでいく。
〈食品産業新聞 2018年12月10日付より〉