「アジアくら寿司」台湾証券市場“TPEx”上場、日系外食企業子会社で初、アジア全域展開の足がかりに
日系飲食企業子会社が台湾株式市場に上場するのは初めて。台湾での上場をきっかけに、現地での事業拡大と、アジア全域への出店に向けた資金調達を図る。
9月17日、台湾・台北のTPEx証券売買センターと、日本・大阪のくら寿司貝塚事務所を中継した「日台中継記者説明会」を開催した。
同社は2014年の台湾進出当時から、上場に向けて準備を進めてきたという。現在は台湾全土に29店舗を展開しており、2019年度の売上高は19.26億元(約70億円)。
今回、台湾版ナスダックといわれる「タイペイエクスチェンジ」へ上場する狙いとして、〈1〉台湾での事業拡大と、3年以内に中国・東南アジアを含めた「アジア地域への出店」の資金調達、〈2〉現地での信頼獲得による「優秀な人材の確保」――などを挙げた。
日本・大阪の会場で登壇したくら寿司・代表取締役社長の田中邦彦氏は、「台湾で上場し成功することが、アジア地域への出店を成功させるための試金石となる」と期待を語った。
台湾の「くら寿司」店舗内
アジアくら寿司の台湾戦略として、〈1〉広さ・家賃などの物件条件を優先し、エリアを絞らずに出店すること、〈2〉台湾にいながら「日本の店舗と全く同じ体験」を提供すること、〈3〉台湾の労務管理に合わせて従業員を雇用するなど「法律・商習慣への適応」――を挙げている。
〈2〉の「日本の店舗と全く同じ体験」を提供するため、仕入れに関しては、当初6割を日本から輸入していたが、現在は海外産地の開発と直接輸入により、日本3割・海外3割・台湾4割にすることで、コストダウンと品質維持の両立を果たした。また、エリアを絞らず出店することから、店舗仕込みを採用し、セントラルキッチンなしで「日本のくら寿司」のクオリティを目指す。
台湾・台北の会場で登壇したアジアくら寿司・董事長兼総経理の西川健太郎氏は、今後の目標について「まず台湾で年間5~10店舗を継続出店し、50店以上の展開を目指す。さらにチャレンジングな目標として、アジア地域で200店舗を目指す」と意気込みを語った。
くら寿司は9月17日現在、国外で55店舗を展開している(アメリカ26店、台湾29店)。アメリカへは2009年に初進出し、2019年8月にはナスダック市場への上場を果たした。なお同社は、海外での売上高を現在の136億円(2019年10月期)から、2030年中に1,500億円を目指している。