「遺伝子組み換えでない」表示の基準変更、凍菜にも影響か
消費者庁はこのほど、遺伝子組み換え表示制度に関する検討会報告書を公表した。「遺伝子組換えでない」表示(non-GMO表示)を認める基準が厳格化され、現行制度上5%以下の混入が認められている大豆とトウモロコシ、それらの加工食品についても「不検出」であることが必要とされた。対象となる農産物8作物と加工食品33食品群の中には、「枝豆を主な原材料とするもの」「冷凍とうもろこし」「冷凍ばれいしょ」が含まれており、冷凍食品業界においても対応を検討する必要が出てきそうだ。
冷凍野菜の商品の中には一括表示の原材料名に「(遺伝子組換えでない)」を添えているものも少なくない。今回店頭で確認したところ、家庭用商品で表示があるものは確認できなかったが、業務用商品を販売する小売店ではポテトとコーンのほとんどにnon-GMO表示が掲載されていた。業務用では枝豆商品でもnon-GMO表示をしている場合があるようだ。業界筋によれば「コーンは米国で遺伝子組み換え品種が多く栽培されていることが、non-GMO表示をしている背景にあるのだろう。ただ枝豆やコーンは一世代限りのF1種から収穫するのが通例となっている。栽培エリア外からの風による受粉も考えられないでもないが、遺伝子組み換え品種が混入する可能性は小さい」との見方がある。
栽培管理や調達基準の厳格化、さらにはnon-GMO表示の見直しの検討は今後必要となるのか。同じ業界筋は「検査頻度はどうなるのかなど、公平性を担保してもらいたい」と政府の対応を注視する構えを見せている。
〈non-GMO表示の方向性〉
遺伝子組み換え表示に係る現行制度では、分別生産流通管理が行われたことを確認した非遺伝子組み換え農産物とこれを原材料とする加工食品には「遺伝子組換えでない」などの表示を任意に掲載できる(任意表示)。特に管理が適切に行われたとしても、大豆とトウモロコシは遺伝子組み換え農産物の一定の混入の可能性があることから、一定の「意図せざる混入」(=混入率5%以下)があった場合でも表示が認められている。なお混入率が5%を超える場合は、適切な管理が行われていなかったとみなされ、義務表示として「遺伝子組換え不分別である旨の表示」が必要とされている。
消費者庁が発表した今後の方向性には、「遺伝子組換えでない」表示が認められる条件について、現行制度の「5%以下」から「不検出」に引き下げることが適当としている。またこの引き下げに当たり、食品の製造・流通・消費に与える影響に配慮し、新たに公定検査法を確立して円滑な検証や監視を担保するとともに、事業者や消費者に十分な周知を行うことが必要だとしている。
「不検出」に引き下げた際に「遺伝子組換えでない」表示ができなくなる食品については、消費者の食品の選択の幅を広げる観点だけでなく、分別生産流通管理を適切に実施してきた事業者の努力を消費者に伝える観点からも、分別生産流通管理が適切に行われている旨の表示を任意で行うことができるようにすることが適当としている。
〈冷食日報 2018年4月10日付より〉
【関連記事】
・純度0%のニーズは本当にあるのか、検査面も不安/GMO表示検討会(大豆油糧日報)
・〈ターミナル〉GMO表示厳格化案は潔く撤回を(大豆油糧日報)
・分別流通制度を維持するために―GMO表示厳格化案の問題点 井上達夫・油糧輸出入協議会専務理事に聞く(大豆油糧日報)