〈マンデー・オピニオン〉いま必要な攻めの経営
こうしてつい保守的に考えてしまうのは、失われた20年といわれる社会を生きてきたためか、ことに食品業界では毎年のように食品偽装など何かが起こり、良い流れが来た矢先に事件が発生して堰止めされるという経験を繰り返しきたことも大きい。
どの業界でも下請けいじめはあるが、業界関連でも最近そうした問題があった。経費を削る、節減するという考え方から、そろそろ売上げを生む体質改善に舵を取らなければならない。今後東京五輪まで、少なくとも2年半はインバウンドはじめ景気の上昇気流にあると予想されている。せめて重い足腰を軽くする前向きな姿勢への転換が求められているのではないか。
最近、原料が天然由来の添加物を扱うA社の営業マンから聞いた話だが、コンビニや量販店でこれだけ加工食品が販売されているのに、添加物の相談にくる関係者が非常に少ないそうだ。実際、商品開発の段階で、菓子パン、飲料、米飯類、惣菜等に対して、様々な酵母やカビ汚染によるカビ臭、シンナー臭、石油臭などによる風味の劣化や異臭の発生、また濁り、白膜、斑点形成、そしてガス産出によるペットボトルの膨張や破裂等の問題を克服しなければならないのだが、極めてナーバスな問題で、せっかく優れた商品を開発しても、それらの問題を解決できずに苦労している現実は案外多いと言う。
「よほど親しくなったメーカーや量販店のベンダーさんでないと相談されませんね」なかなか相談されないと嘆くのだ。
どちらかと言うと、風味の劣化や異臭の発生という問題はできれば触れたくない、少なくともおおっぴらに話し合う土壌が社会には形成されていないのが背景らしい。素晴しい新商品を開発したまではいいが、その後のこうした問題の発生により、店頭まで進むには様々な問題の克服があり、結果、消費期限を短くするなど回転を速くすることで克服している面もあると言う。
それが原因で商品開発が進まないのであれば本末転倒だ。実際、添加物がなければ食品の経済社会が回って行かないのは事実であり、食品表示の観点からも避けて通れない問題だ。冷凍食品にはそれほど関係ない世界かも知れないが、商品開発にはもっと大胆に様々な議論を明るく前向きに行っていく必要がある。
保守的にならずに攻めた改善に努めたい。
厨房機器業界で好調なB社は、東日本大震災で主力工場が損壊したにもかかわらず、その年から立ち上がり以降、増収増益を続けて厨房総合メーカーとなった。その社風に関し、社長はDNAで受け継がれてきたと答える。
「当社は元々板金ヤの出身。好調だった先代の時代に、常に現場に出向いて作業をしないと仕事が成り立たない職種では広がりも狭い。もっと広い市場に進出しないと明日はないと考え、厨房機器メーカーに業態替えを行い成功してきた。だから製品でもシステム開発でも、発案したらまずやってみること。失敗したら同じ轍を踏まなければいい。失敗しないと次の成功につながらない。本人がやる気のある限り好きなようにやらせてきた」。
結果、大きな成功につながったと笑う。人手不足と嘆いている前に、攻める経営が必要となってきた。
〈冷食日報 2018年4月16日付より〉
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