コンビニ各社が冷食PBに注力、カップ容器・冷凍弁当・有名店コラボなど 高まる“中食需要”に対応

セブンイレブンと“蒙古タンメン中本”がコラボした「セブンプレミアム 蒙古タンメン中本 汁なし麻辛麺」
コンビニでも冷凍食品の需要が拡大しつつある。調理済みの食材を持ち帰って自宅や職場で食べる“中食需要”が増加傾向にあり、各社それに対応した商品開発に注力。10~11日に発表されたコンビニ各社の決算会見でも、こうした食品の引き合いが堅調に推移しているという話は少なくない。特に今夏は、猛暑や台風などの天災により客足が遠のく場面もあったが、簡便性が高く、長期保存もできる商品としての需要があったという。

市街地の中にあるセブン-イレブン。入口から目立つところに冷凍平台が置かれている。中にはピラフや炒飯に加え、から揚げ、餃子、やきとりなどのおつまみ類も充実している。別の棚をのぞくと、冷凍ミックス野菜や冷凍果物、簡便性の高い冷凍麺などが置かれている。スーパーよりも圧倒的に売場スペースは小さいが、品揃えは充実している。

あるコンビニチェーンの広報担当者は「働く女性が増え、気軽に食べられて保存もできる冷凍食品の人気は着実に高まっている」と話す。ピラフや炒飯などに加えて、今年は野菜の価格高騰の影響もあり、安定的な価格で手に入る冷凍野菜も人気が高かったという。

ドラッグストアなどの異業種でも食品の販売を強めている。中食需要も高まっているため、スーパーでは出来たての惣菜にこだわった施策の展開が増えつつある。価格で勝負ができないコンビニの場合は、オリジナル商品の拡充が差別化への近道になる。

その中でも、自社プライベートブランド(PB)は他社にない価値を提供できる商品として、各社開発に力を注ぐ。スーパーに置かれているナショナルブランド(メーカーによるブランド)の商品とは一線を画すことができるため、差別化につなげやすい。有名飲食店とコラボレーションした商品も存在感を増しつつある。

〈セブン&アイ PB冷食の売上は10年前の5倍以上〉
セブン&アイホールディングスは、自社PB商品の冷凍食品が発売当初(2008年)と比べて5倍以上の売上になったと、決算会見で説明。蒙古タンメンの中本や、北海道のラーメン店のすみれとコラボレーションした商品の発売や、素材系商品の拡充、トレー化した簡便惣菜の拡充などを行っている。11月からは、皿に移す手間を省いたカップごはんシリーズの販売も始まる。

カップ容器を採用した「セブンプレミアム 炒め油香るチャーハン」(11月20日から関東・東北の一部のセブン-イレブン約7,000店で先行発売)

カップ容器を採用した「セブンプレミアム 炒め油香るチャーハン」(11月20日から関東・東北の一部のセブン-イレブン約7,000店で先行発売)

〈ミニストップは“冷凍平台”を実験導入、約2倍の売上に〉
イオングループのミニストップは、新規の取り組みとして、全国30店で中身が見える冷凍弁当などを並べる冷凍平台を実験的に導入。非導入店と比べて約2倍の売上となったが、導入で使うゴンドラ5本分のスペースと比べると売り上げがキャッチアップできないため、導入拡大については来年以降を見込んでいる。中身が見える冷凍弁当は、10月2日には関東の全店で販売を開始。従来の商品以上に女性層からの支持が厚いという。更なる女性支持獲得に向け、スイーツ商品にも力を入れる考えだ。

ミニストップ「ピタッと冷凍 オリジナルワンプレートごはん」シリーズの「チーズハンバーグ&バターライス」

ミニストップ「ピタッと冷凍 オリジナルワンプレートごはん」シリーズの「チーズハンバーグ&バターライス」

ローソンでは冷凍食品の販売が前年3~8月と比べて約15%増加した。カットフルーツやナチュラルローソンのブランドで取り組んでいる糖質をカットした製品に注目が集まったという。今後はひとり飲みに合わせた個食サイズのおつまみや、オリジナルのタイアップ商品にも注力する。

ユニー・ファミリーマートホールディングスのファミリーマートは、タレントの香取慎吾さんをイメージキャラクターとしたCM放映が好評で、女性客の取り込みに成功。PBの「お母さん食堂」も、ピラフなどの定番商品などの売り上げが順調に推移した。今後も販売に注力する方針だ。

香取慎吾さんを起用したファミリーマート「お母さん食堂」CM

香取慎吾さんを起用したファミリーマート「お母さん食堂」CM

〈冷食日報 2018年10月16日付より〉