〈マンデー・オピニオン〉災害を乗り越える大阪拠点

冷食日報 2018年11月5日付
10月24日~25日に本紙が加盟する冷凍食品記者クラブで大阪の冷凍食品工場2カ所を訪問した。高槻市にあるニチレイフーズ関西工場と泉佐野市にあるケイエス冷凍食品泉佐野工場だ。

関西地域は今年、6月18日の大阪府北部地震、西日本「平成30年7月豪雨」、9月の台風21号――と大きな自然災害が続いた。災害を乗り越え、革新的な製造技術を駆使して冷凍食品市場の健全な成長に寄与する企業を広く紹介する、というのが今回の取材の趣旨だ。

地震の震源地となった高槻市にはまだブルーシートで屋根を覆った家屋が数多く見られる。タクシー運転手によれば、倒壊した家屋はあまり見ないが、屋根瓦が崩れた家屋が多いという。同市では小学校のブロック塀が崩れて小学生が下敷きになるという痛ましい事故もあり、修繕工事は公共施設が優先される状況があった。さらに近年、瓦の生産量は減少(全国陶器瓦工業組合連合会によれば、2015年の粘土かわらの出荷量は10年前に比べて6割弱減しており、出荷メーカー数は7割減少している)、瓦屋根の修繕は後回しになっていたところに台風21号が来たのだ。

地震と台風のダブルパンチを受けて「この際、瓦葺き屋根はやめてしまうという話も聞く」という。

ニチレイフーズ関西工場は地震の際、1日操業を停止した。地震の発生は朝の8時前だった。一部で生産作業は始まっていたが、大きな事故はなかったという。機械のずれの修正やラインの点検を行い翌日には稼働を開始した。

ケイエス冷凍食品の泉佐野工場は関西国際空港近く地域にあるが、台風21号で関空連絡橋にタンカーが衝突した映像や大阪南港の高潮による被害から連想されるような被害はなかった。ただ工場建屋や設備に影響はなかったものの、従業員の生活拠点や交通機関の復旧をまって、1週間は通常のフル生産はできなかったという。

さて取材目的のもうひとつ「革新的な製造技術」の点では、両者共通点があった。ニチレイフーズ関西工場で生産する「焼おにぎり10個入」は、昨年8月に船橋工場から生産を移管する際に、“ぬって焼く”を表裏2回ずつ繰り返す新製法を採用した。はじめの“ぬって焼く”は表面を乾かすために、2回目の“ぬって焼く”は香ばしさを出すために行う。

醤油を薄くぬって焼く――を繰り返す手作りの再現ともいえる製法を採ることで、従来品よりも表面の照りつやと香ばしさを出している。

他方、ケイエス冷凍食品泉佐野工場で生産する「国産鶏 鶏つくね串(照焼)」は今秋のリニューアルで、従来の蒸し焼きに加えて、遠赤外線による焼成を行う“2度焼き”製法を採用した。製品は第1焼成で完全に加熱されており、第2焼成は香ばしさを出すための工程となっている。

タレをぬってから焼く「照焼」製法自体もこれまで同商品の特長となっていたが、その特長をさらに追求したのが、この2度焼き製法だ。特別に第1焼成だけの製品と仕上げの第2焼成を行った製品とを食べ比べさせてもらったが、余韻の違いは明らか。同社が提案を進めるおつまみ利用にもぴったりといえる。

焼鳥やうなぎなどタレづけの焼きものには「ぬって焼く」を繰り返す伝統的な調理方法がある。両者ともそれを工業的に再現した。工場では合理化・省人化が進むが、ニチレイフーズ担当者が「その分、品質にお金をかけられるようになった」と話したのが印象に残った。

〈冷食日報 2018年11月5日付より〉