冷凍枝豆 台湾製造者団体の値上げ要請問題で輸入価格の動向不透明
事業者団体による一律の値上げ要請文書に対して、日本の輸入業者からは困惑の声も聞かれる。台湾の同団体による値上げ要請書はこれまでもたびたび発せられている。本紙で調査したところ、今回の文書のほか2010年10月、11年4月、12年2月、12年10月――の値上げ要請文書を確認した。台湾では春と秋に枝豆の収穫期があり、それに合わせた要請となっている。
値上げの理由として、台湾元の対米ドル為替の上昇や燃料・栽培コストの上昇(10年10月、12年10月)、物価上昇や農場の栽培意欲の低減対策(12年2月)、悪天候による減産(11年4月)、圃場の賃借料の引き上げ(12年10月)――とその時々の背景が挙がっている。今回の値上げ理由は、今年2月から台湾糖業公司の圃場レンタル料金が約7%値上げされたこと、今年1月から最低賃金基準が改定され人件費が約5%上昇していること、加えて燃料、輸送費、包装資材などのコストが大幅に上昇していること――としている。
一方で事業者団体が一律の値上げ要請をすることは独占禁止法上問題とならないのか。いわゆる価格カルテルに当たるのではないかと疑問視する向きもある。この点、公正取引委員会によれば「形式的には事業者が共同して対価を引き上げる行為であり、好ましくはないと思う」としながらも「法律上の禁止行為に当たるかどうかは、台湾産枝豆が日本市場を独占しているなどの状況があって、その行為が国内市場の競争を制限していることを要する」という。
輸入枝豆のシェアで台湾産はトップではあるものの4割を占めるに過ぎない。中国、タイなど代替品がある日本市場の状況では違法とはいえないだろう、というのが公取委の見解だ。
輸入枝豆の平均キロ単価の推移を見ると、11年に入るまで下落基調にあった単価は確かに、台湾側の最初の値上げ要請(11年1月1日からの値上げ要請)以降、上昇局面に入った。
しかし、値上げ要請は1kg当たり0.1米ドルだったのに対して、11年~12年の台湾産の上昇率はかなり緩やかであることがわかる。そのため全体平均との値差が13年まで急接近している。日本側の抵抗がにじむ様子を見て取れる。
16年以降、価格が下落局面に入りかけている。再び値差が広がりつつある状況もあるなか、台湾側の値上げ要請によって輸入価格がどのように動くのか。
財務省貿易統計を見ると、冷凍枝豆の輸入量は9月まで3カ月連続で前年を下回り、台湾産は9月に2桁減と落ち込んだ。需要が旺盛とは言えない市場環境にある。業界筋は値上げ要請への対応について明確な発言を避けており、先行きは不透明だ。
〈冷食日報 2018年11月28日付より〉