日本水産、18年10~11月好調で通期計画達成にも手応え/的埜明世社長
足元の業績について、上期(4~9月)の業績は、売上高5.8%増3,504億円、営業利益18.6%減105億円と増収減益だった。上期のセグメント別売上は▽水産事業2.5%増▽食品事業6.3%増▽ファインケミカル事業1.2%増▽物流事業1.9%増▽その他48.5%増――と全事業で増収。利益面では、水産事業が26億円営業減益で、それが全体での24億円営業減益に響いたが、的埜社長は「水産事業は、南米鮭鱒養殖事業で、前年に稚魚が死んでしまった影響であり、原因がはっきりしていて予測もできていた」とした。
また、通期見通しについて「10~11月、食品・水産ともに盛り返しており、12月に頑張れば年間計画の売上高7,065億円(※上期末に6,980億円から上方修正)、営業利益220億円、経常利益235億円の計画は達成できる感触がある」とした。
その言葉の通り、日水「個別」の4~11月売上高は、水産関係が前年比17億円増972億円、食品関係が90億円増1,626億円、ファインケミカル2億円増94億円、事業計111億円増2,694億円で、上期より10~11月の進捗が良くなっている。
〈中計「MVIP+2020」、食品ではグローバルなライフスタイル変化に対応〉
今期が初年度の3カ年中計「MVIP+2020」では、最終年度の2021年3月期、売上高7,560億円、営業利益290億円を計画。的埜社長は「ひとまず順調なスタートを切っており、今期、来季いかに伸ばせるか、さらに大事になる」とした。
成長に向けた取組みとして〈1〉養殖事業の高度化・拡大:養殖技術高度化(完全、陸上養殖等)による差別化/魚種拡大によるリスク分散と収益力強化〈2〉ライフスタイルの変化に対応/グローバルに広がる即食・簡便ニーズや健康志向に対応した事業に構造転換〈3〉医薬品原料ビジネスの海外展開――の3つを挙げるとともに、国内市場が縮小する中、それぞれでの海外展開強化を掲げた。
このうち、食品事業にかかわる〈2〉では、国内のみならず、北米、欧州でも即食・簡便や健康ニーズに対応した商品を投入するとともに、それを支える生産体制を転換・強化。日本国内では、チルド食品事業で、CVS 向けの日本クッカリー伊勢崎工場が19年1月から稼働し、増力を図る。
フランス(シテマリン社)では、18年度より5工場体制とし、生産量拡大と生産性を強化。また、簡便調理カテゴリー商品で、従来の冷凍魚フライから、さまざまな温度帯に拡大するとともに、えび加工品、ベジタブル・パテ・フライなどカテゴリーも拡大する。
台湾では、大明食品の冷凍枝豆新工場が今年11月から稼働開始し、来年早々に本格稼働することで、能力アップとともに品質強化、省力化を実施。
タイでは、デルマール社で香港・シンガポール・韓国などに向けた冷凍食品の対応を強化するため、2020年度から新工場を稼働させる。
〈成長戦略とCSR 活動をリンクさせ社会課題の解決に〉
事業を通じた社会課題の解決の取組みについて、重要課題(マテリアリティ)として▽豊かな海を守り持続可能な水産資源の利用と調達を推進する▽安全・安心で健康的な生活に貢献する▽社会課題に取組む多様な人材が活躍できる企業を目指す――という3つを掲げており、中計における成長戦略と、CSR活動をリンクさせ、事業を通じて社会課題の解決に取組む。「今までの中計は売上と利益をどうやって確保するかが主眼だったが、CSR活動を重視し、3つのマテリアリティも捉えて中計の達成も考える」。
より具体的には、持続可能な水産資源の利用と調達では、グループ調達品について2030年までにすべて持続性が確認されていることを目指し、水産物についての資源調査・公表を実施。また、海洋環境保護にもつながる鳥取県船上山での湧き水の保全活動、フードロス対応のさまざまな発信活動や、NPO への寄付活動、人材が活躍できる企業を目指す健康経営活動などを既に推進している。
〈冷食日報 2018年12月19日付より〉