〈シリーズ工場訪問〉米久デリカフーズ静岡工場、「大龍」など本格中華を展開、餃子・海老チリ・麻婆豆腐、OEMも

静岡県沼津市に本社を置く米久デリカフーズは、伊藤ハム米久ホールディングスの事業会社・米久グループのデリカテッセン製造販売会社として、本社工場(静岡県沼津市)、静岡工場(静岡市)、前橋工場(群馬県前橋市)の3つの製造拠点を持つ。業務用冷凍食品の製造では約40年の経験を有しており、近年では家庭用冷凍食品の「大龍」シリーズ、四川飯店統括料理長の鈴木広明氏が監修した商品などの展開にも注力している。静岡工場で現在の取り組みなどについて、米久の玉井広之営業本部冷凍食品ユニットマネージャー兼首都圏事務所長、塗矢元治加工品事業部デリカ商品ユニットユニットマネージャー、米久デリカフーズ静岡工場の中山晴之工場長に話を聞いた。
左から玉井氏、塗矢氏、中山氏

左から玉井氏、塗矢氏、中山氏

――米久デリカフーズの特長について
 
台湾・広東料理やイタリアンを得意とするアンゼンフーズ、冷凍米飯を得意とするセブンフードサービス、とんかつを得意とするヤマキ食品の3つの会社が集まり、米久デリカフーズとなった。冷凍食品のOEM製造を得意としており、大手冷食メーカーの商品や外食店など様々なチャネルで商品を展開している。
 
-5℃チルダー商品は従来から展開していたが、12年に「大龍」の営業権を取得、13年には冷食部門を新設して-18℃の家庭用冷凍商品の展開を開始した。まず関東で展開するという方針を掲げており、大阪から九州までの西日本もカバーしているが、まだまだ成長の余地がある状況となっている。売上げは業務用が8割、家庭用が2割の比率となっており、ともに伸長している。国内に3つの製造工場を有し、本社工場では水餃子、焼き済み餃子、春巻などを製造している。前橋工場では業務用の冷凍とんかつを製造しており、冷めてもやわらかい特長があり、年々拡大している。また、静岡工場は西館と東館に分かれており、西館では餃子、海老チリ、麻婆豆腐などを、東館では熟練の従業員が手作業で粽などを製造している。
 
――人気商品、商品開発・製造へのこだわりについて
 
冬場では料理人・道場六三郎氏が監修した「もちっとつるん水餃子」の生産量が多い。道場氏に皮の食感と中身のジューシーさをアドバイスいただいたこともあり、非常に売上げも伸びている。また、通年ではミニサイズの春巻きが12本入った「春巻巾着」が長年売れ続けている。

「もちっとつるん水餃子」

「もちっとつるん水餃子」

現在、350~400ぐらいのアイテムを持っており、本格的な中華料理の味の再現を非常に得意としている。本格的な商品を開発するため、開発担当者が毎年中国へ研修に行き、中華料理を食べる、現地の料理教室に通うなどして本場の味を体得することを何年も続けている。そういった取り組みもあり、後発ながら冷凍の中華料理であれば、当社だと取引先からも認めていただけるようになってきた。中華料理の味の再現力と技術力に加え、とんかつに関するノウハウが当社の冷食事業の下支えとなっている。また、ラー油や甜麺醤(テンメンジャン)なども工場で作り、商品の原材料として使用している。
 
――現在、注力している商品について
 
今年から四川飯店統括料理長の鈴木広明氏監修の「四川麻婆豆腐」を投入している。家庭用冷凍食品「大龍」シリーズの基盤を作った方も四川飯店の創業者・陳建民氏の弟子であり、四川飯店とは非常に深いつながりがある。来年も鈴木広明氏が監修した商品の投入を計画しており、「大龍」シリーズとあわせて強化していく。

四川飯店統括料理長・鈴木広明監修「四川麻婆豆腐」

「四川飯店統括料理長 鈴木広明監修 本格 四川麻婆豆腐」

「大龍」シリーズでは、「エビチリ」「酢豚」「小籠包」「油淋鶏」を展開。一度購入された方がリピート買いしていただいていることが人気につながっており、中でも「エビチリ」が一番人気となっている。冷凍食品は、数年前まではお弁当用や料理用の素材が主であったが、最近ではおかずなど料理そのものとして求められてきた。流通の店頭も変わり、消費者の意識も変わってきて、冷凍食品がおいしいとの意識が日本でも根付いてきたと感じている。

「大龍 エビチリ」

「大龍 エビチリ」

――今後の展開について
 
冷凍食品は余計なものを入れておらず、経時劣化をあまり気にしない利点があり、本格的なレストランの味を家で再現することができる。また、人手不足により店頭などで調理する人が少なくなることから、これからの5年間は業務用商品にとっては大事な時期だと考えている。温めるだけで、店頭で作ったような業務用の冷凍食品を提供できる点で当社は優位性があると感じており、大手チェーンなどからも引き合いが増えている。
 
また、冷凍食品事業に取り組み、取引先とのつながりができてきた。このつながりに当社と伊藤ハムの技術を集めた商品を投入して、つながりをより太くしていきたい。取引先によっては、当社の冷凍食品事業を知られていないことがある。3年後にはこの状況が変わっているぐらいのスピード感を持って取り組みたい。創業精神に「感動を創る」を掲げている。お客様に感動していただけるような新たな商品の製造も実現したい。
 
〈静岡工場の概要〉
【西館】

▽主要生産品目(冷凍食品)=餃子、海老蒸し餃子、ミニ餃子、海老チリ、酢豚、麻婆豆腐、胡麻団子
▽敷地面積=2,705平方メートル
▽延床面積=3,817平方メートル
▽年間製造量=約2,000t

【東館】
▽主要生産品目(冷凍食品)=肉饅頭、中華菓子、粽、小籠包、ニラ饅頭
▽敷地面積=3,128平方メートル
▽延床面積=3,312平方メートル
▽年間製造量=約2,000t
 
〈冷食日報 2018年12月26日付より〉