ベビーフード・幼児食の市場が拡大、出生数減少も1人あたり使用量が増加

出生数は減少も、ベビーフード市場は拡大(画像はイメージ)
〈幼児食、関連食品に伸びしろ〉
働く母親が増え忙しい世帯の増加と、ベビーフードを活用し子どもと遊ぶ時間を作りたいとの考えが広がる中、出生数が減少するも、ベビーフードの市場が拡大している。

ベビーフードを製造する主要メーカー6社(アサヒグループ食品、キユーピー、ピジョン、 森永乳業、雪印ビーンスターク、アイクレオ)が加盟する、日本ベビーフード協議会のベビーフード生産統計では2018年が金額(出荷ベース)でフードが前年比12%増、飲料やおやつを合わせたベビー加工食品合計は8%増の440億円となり、同協議会加盟6社以外の食品企業のベビーフード、1歳以降の幼児食も含めると、500億円を超える規模に成長した(食品産業新聞社推計)。

中でも伸長しているのが、食べたい時にすぐあげられるレトルト食品で、産後の仕事復帰が早い母親が増える中、子ども1人当たりの使用頻度・量が増えて、数字を押し上げた。近年は統計の伸びをみて新たに参入してくる食品企業も目立ち、赤ちゃん専門店においては陳列商品数が年々拡大、離乳完了期がかつてより緩やかになったことで、高月齢商品や幼児食、関連食品も増えている。

2018年ベビーフード生産統計

2018年ベビーフード生産統計

〈一般食品メーカーも参入、商品が多様化〉
「ベビーフードは日常的に使うものになってきた。母親の就業率が増え、市場の伸びしろはまだあると見る」(アサヒグループ食品)。
 
日本ベビーフード協議会加盟6社の2018年のベビー加工食品生産は、重量ベースで前年比5%増の3万7447t、金額(出荷ベース)はご飯とおかずのセット品など単価が高めの商品が伸び、重量ベースを上回る伸びとなった。
 
ベビー加工食品全体の2018年出荷金額440億円のうち、フードに関しては、品質基準が厳しく新規の参入障壁も高いことから加盟5社の商品が市場をほぼ占めており、300億円超。飲料については加盟5社の商品が93億円だが、ベビー専用ではないものの大手飲料メーカーの乳児用規格適用食品の麦茶などが、コンビニ、スーパー、ドラッグストアの定番棚に入り、消費者と接点が多いこと、また常温パック飲料がスーパー大型店のチルド売場のキッズコーナーにヨーグルトやチーズと並んで入り、消費者との接点が増えるなど、これら販売分を含めると、100億円は超えると見られる(食品産業新聞社推計)。おやつについては加盟5社の商品が44億円だが、統計にはゼリー状のジュレが含まれていないため、この分と、菓子メーカーなどの分を合わせると50億円近くになる模様。

ベビーフード生産金額と出生数の推移

ベビーフード生産金額と出生数の推移

1歳以降の幼児食については、2007年改定「授乳・離乳の支援ガイド」(厚生労働省)で、離乳完了期が後期にずれたことによる各社の幼児食ラインアップ拡充、また一般食品メーカーの参入による様々なタイプの商品の登場で市場が活気づいており、100億円に迫る勢いで成長しているとみられる。
 
「ベビーフード統計で2018年最も伸びたのはご飯とおかずのセット品のレトルト詰合せで25%増。外出用に使え、食べきりで(特に夏場)衛生的、食べたい時にすぐあげられる利便性が、現代の親のニーズに合っている」(日本ベビーフード協議会)。
 
ベビーフードも幼児食も支持される共通ポイントは、利便性の高さと、1食分に配合される栄養素の豊富さ。野菜が多く入っていて、家庭で調理しにくい魚やレバーが入っているものが特に支持され、専門店の売り場でもそれら商品が先に品薄になる。「骨やくさみ取りなど魚全般の調理に苦手意識がある中で、月齢9カ月以降を対象とする商品は鉄分入りを求める傾向も強く、マグロの赤身を使った商品を増やしている」(アサヒグループ食品)。
 
一方、手作り派の需要を満たす商品も増えている。従来からある野菜などのフリーズドライ商品、粉末タイプの米がゆ、だし、スープなど以外に、ごぼうやかぼちゃなど加熱調理済みカット野菜や、りんごなど果物の真空パックなど、素材系の新しいタイプが増え、「時短調理」の現代ニーズに合致、時間はないが手作りしたい層から支持を得ている。白米を楽しく食べさせるふりかけ類もピラフやチキンライス、魚のすり身で作った乾燥キャラチップなど多岐にわたり、幼児を過ぎても楽しめることことから、この分野はさらに成長する可能性が高い。
 
またアレルギー配慮の商品もコーナー化できるほど品数が増えている。カレールー、ケチャップ、ソース、醤油、米粉パスタ、卵を使わないマヨネーズ風調味料など、大人向け商品も陳列棚に加わり、需要は底堅い。
 
さらに腸内環境に着目した商品も近年目立っている。ミルクや食品に混ぜて使うオイルや粉末などで、医薬品製造会社や海外企業の商品もあり、統計に出ていないが一部商品は伸びている。
 
「事業者向けのWEBサイトから、消費者向けのWEBサイトへ、年明けまでにリニューアルし、ベビーフードの始め方・使い方・保存方法などを掲載、消費者の意見を聞く場も設けていく」(日本ベビーフード協議会)。一般食品メーカーの参入でラインアップが多彩になっており、情報整理も不可欠だ。
 
商品情報で各社が重要視しているのが商品の月齢表示。アイトラッキング(視線計測)調査によると、消費者が最初に見るのは月齢であり、各社も表記改良と商品の月齢別早見表作りなどに注力。消費者が順次入れ替わる特異な市場だからこそのこうした取り組みと情報発信で、少子化でも伸びしろのある市場として今後も注目されそうだ。

メーカー各社は多様な商品を展開

メーカー各社は多様な商品を展開