2019年の国内冷食生産量は微増の158~160万トンの見込み/日本冷凍食品協会
2019年の冷凍食品国内生産量は、前年比100~101%の微増で、158~160万トン程度になる見通しだ。家庭用は商品のブラッシュアップ、PR活動展開、買い場の広がりなどで比較的堅調だが、業務用は外食で台風や消費増税の影響があり、全体としてやや弱含みだとみられる。また、「冷凍食品100周年」を迎えるに当たり、日本冷凍食品協会(冷食協)としてさまざまな広報活動を行う。同協会の伊藤滋会長(マルハニチロ社長)が10日、本紙「冷食日報」など専門紙9社が加盟する冷凍食品記者クラブに対して年末記者会見を開き、市場の状況や協会の活動などについて語った。
冷食市場については「家庭用は各メーカーが基幹商品のブラッシュアップを進めてるとともに、テレビCM、各種イベントなど積極的にPR活動を展開したため、比較的堅調に推移した。従来のSM(食品スーパー)に加え、CVS(コンビニエンスストア)やDgS(ドラッグストア)など買いチャンネルの多様化も市場成長に繋がっている。業務用は、惣菜など中食が引き続き好調を維持する一方、外食は台風や消費増税の影響もあり、全体としてはやや弱い動きになっていると見ている」とした。
消費増税の影響について、「現時点では、キャッシュレスのポイント還元やプレミアム付き商品券など政府の対策の効果がかなりあったという見方もあり、心配したほどの影響は出ていないと考えている。特に、軽減税率が適用された冷凍食品の売上については、今の所大きな動きは出ていない」という。
また、大型台風、豪雨被害などの自然災害の多発については、小売店や外食での来客数減、観光産業への影響で消費に多大な影響を与えたとの見方を示した。「供給面でも工場の直接的被害、製品の配送などでの影響を受けた。今後自然災害対策は大きな課題となった」という。
業界の課題としては、コストアップ問題および人手不足問題の2つを挙げた。コストアップ問題については、原材料コスト上昇のほか、物流コストの上昇があり、一部メーカーでは業務用冷食を中心に価格改定を行ったが、まだ十分には反映しきれていないという。
人手不足については「深刻な問題となってきている。冷凍食品は他の装置型産業と違い、一部労働集約的な工程が必要だが、一部メーカーではAIやロボット活用など製造工程のさまざまな見直しによる省人化を進めており、今後省人化対策がますます必要になってくると思っている」としたほか、今年度4月より導入された特定技能制度を使い、業界として外国人材を積極的に活用していく方針を示した。
生産設備については、生産基盤の維持、強化、省力化対策などのため、近年冷凍食品メーカーの国内での新工場建設・ライン増設などの大規模改修が活発となっているという見方を示した。今年度の主要なもので、新工場では、▽ちぬや冷食・四国工場▽ノースイ食品・第2工場▽イートアンド・新関東工場、大規模改修では▽明治・茨城工場▽テーブルマーク・山本工場▽サンマルコ食品・恵庭工場――などを挙げた。
また、協会として積極的に関与してきたフロンから自然冷媒への転換を図るための環境省補助事業について、今年度の予算額はトータルで75億円となっており、協会としてもそれを活用し、自然冷媒への転換をさらに進める方針だという。
また、来年度は、北海道森町で水産物冷凍事業が始まって100周年に当たることから、協会の広報事業では、従来の事業内容の拡充のほか、冷凍食品100周年にちなんだ新たなイベント、スポーツに関する事業内容等を検討する。現時点で未確定ながら、秋に森町と共同でのイベントも計画する。
〈冷食日報 2019年12月11日付〉