2020年秋の業務用冷食、新商品数は大幅減、中食向けの比重高まる
コロナ禍における社会環境の変化によって、業務用冷食市場は量販店惣菜の比重が高まると見られる。各社の新商品提案でも惣菜向けに、これまでの現場作業の簡略化のほか、パック売りに対応した品質の訴求が目立った。他方、外食ルートにはテークアウトやデリバリーへの支援を打ち出す取り組みが見られる。
業務用市場はコロナ禍によるマイナス影響が長引きそうだ。業務用冷凍食品においては2020年春の新商品についても商談が思うように進まない状況のなか、秋の新商品の開発、発表時期を迎えた。春の新商品の再提案が必要だと明言するメーカーもあるところだ。
商品開発の環境についても、政府による在宅勤務の要請を受けて、社員の出社率を下げる中での業務は困難を伴った。
他方、市場の動向が不透明であることから、有力メーカーの中には今秋の新商品に関しては、打ち出し型の発表を見送ったり、新商品の発売を来年1月に延期する企業も見られる。
ニチレイフーズは新商品数に関しては2019年秋の23品、2020年春の20品と遜色ない新商品数をそろえた。ただし、これは例外といえる。
同社は量販店惣菜向けに、自粛ストレスに対応した“プチハレ需要”や在宅勤務に対応した“毎日の昼食需要”に焦点を当てている。
次いで新商品を多くそろえたのは日本水産。同社は2019年秋、2020年春とも30品以上発売しているが、当季は17品だった。惣菜売場がパックや袋売りに変わったことに対応して、パック売りでも衣の食感を保つコロッケなどを品ぞろえした。
ヤヨイサンフーズは春の新商品を再提案することを課題に挙げ、当季の新商品は季節性の高い商品を中心とした。
業務用専業メーカーでは日東ベストと大冷が一部商品を除き、1月に新商品の発売を延期している。
未曽有の危機に直面している外食業態に対する取り組みも重要な課題だ。テークアウトやデリバリー向けを謳った新商品こそほとんど見られないが、メーカーによるメニュー提案などの外食事業者を支援する取り組みがいくつか見られる。
味の素冷凍食品はコロナ禍での新しい提案の手法として、SNS やYouTube を使った提案を展開している。コスト面の情報やテークアウト向けメニュー提案を充実させているという。さらに広く提案を届ける仕組みづくりにも取り組む考えだ。
ニチレイフーズはホームページ上に、新たにテークアウトを始める外食事業者向けにメニュー提案や衛生面の注意点の情報を公開した。閲覧数は好調だという。
〈冷食日報2020年9月28日付〉