ヤヨイサンフーズ「Oliveto」、業務用メーカーが築いた「ブランド」商品、消費者向け販売も強化〈ブランドの創りかた〉

「Oliveto スパゲティ・ナポリタンR」盛り付けイメージ
ヤヨイサンフーズが展開する「Oliveto」(オリベート)ブランドは、“自然派イタリアンの旗手”とも称されるリストランテカノビアーノ(東京・目黒)の植竹隆政シェフ監修のもと、2009年に発売開始した冷凍食品ブランドだ。

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お客様に満足いただけるプロユース品質をお届けしたい、というコンセプトのもと、シェフのアドバイスを受けて合格品質に達したものだけを商品化するという開発方針で、これまでパスタメニューを展開してきた。

同社は業務用冷凍食品専業メーカーだが、量販店や通販・宅配ルートでの取り扱いも多くあり、TV 番組で取り上げられるなど、一般消費者への認知度も高まってきている。また、そのことが2020年にコロナ禍の影響で業務用市場が大きく苦戦する中で、業績を下支えすることにもつながった。そして今春、新たなカテゴリーへ挑戦する商品投入を行った。

ブランド立ち上げ当時商品企画に携わった加藤晋一郎氏(現・営業本部営業統轄部長代行)によれば、「Oliveto」以前にも、シェフ監修品やイタリアンのシリーズ展開をしていたという。

加藤晋一郎氏と鈴木智子氏

加藤晋一郎氏と鈴木智子氏

シェフ監修品では、2001年から「エクセレントシェフ」シリーズとして、和・洋・中で計4人のシェフの監修を受け、前菜からメイン、デザートまで、コースメニューの冷凍商品を展開していた。「コースメニューということもあり、どちらかと言うとギフト需要を想定したものだった」(加藤氏)そうだ。
 
その後2004年には「プチラグジュアリー」シリーズとして、単品をセレクトするアソートタイプに切り替え、宅配・通販需要を取り込んできた。
 
一方、イタリアンでは、パスタ自体は1990年代半ばから手掛けていたが、2000年、イタリアの有名パスタメーカー「Buitoni」(ブイトーニ)の業務用冷凍食品におけるライセンス契約を得て、パスタを中心にリゾット、ピラフ、コロッケなど、外食、キャッシュアンドキャリー(C&C)など業務用ルートに向けてイタリアンメニューを展開し、一定の成果を得た。
 
ブイトーニ社との契約満了後、新たなイタリアンカテゴリーの必要性から、喫茶店・レジャー施設などの業務用外食ルートや、宅配・通販ルートを視野に2009年に新たに立ち上げたのが「Oliveto」だった。それまでの経験から、特に通販・宅配ではブランド力が重視されていることから、検討の中で植竹シェフに監修を依頼し、快諾を得た。
 
「Buitoni」ではパスタ以外のメニューも展開していたが、まずはシンプルに乾スパゲティーのソース入りパスタ一本とし、当初はミートソースやペペロンチーノといったポピュラーなメニューからスタート。軌道に乗ってからは植竹シェフのアイデアを活かしたオリジナルメニューも追加。2012年には生パスタも加え、改廃やリニューアルを行いながら現在、パスタでは乾スパゲティー7品・生パスタ4品の全11アイテムを展開している。

「Oliveto スパゲティ・ナポリタンR」パッケージ

「Oliveto スパゲティ・ナポリタンR」パッケージ

加藤氏は、ブランド確立の中で潮目が変わったのは2012年に生パスタを追加した際の発表会だったと振り返る。その際、新商品発表会を植竹シェフのレストランで流通関係者も招待して開催。植竹シェフ本人によるメニューアレンジのプレゼンテーションを行ったことも好評を博し、流通関係者の認知度が高まるとともに、この商品を売っていこうという声も多く挙がったという。
 
さらには、TVショッピングに植竹シェフ本人が出演して商品紹介を行ったことでも認知度が高まり、通販での販売はもちろん、「この商品を置きたい」という量販店からの問い合わせが増えた。いわば、単なる監修だけに留まらない、メーカーとシェフが一体となって育成してきたブランドと言えるだろう。
 
なお、同品は業務用で一般的な湯せん調理のほか、家庭でも使いやすい電子レンジ調理にも対応した包材を使用している。また、市販用の冷凍パスタに比べてコンパクトなパッケージで冷凍庫にストックしやすく、通販や店頭でまとめ買いしやすいことも好評だという。
 
〈13年を経てパスタ以外初投入、目指すは“間違いない”ブランド〉
同ブランドは長年パスタ1本で展開してきたが、コロナ禍以降の認知度の高まりもあり、13年間を経た今春、満を持して初のパスタ以外のメニューとなるグラタン「海老トマトクリームグラタン」および米飯「ポルチーニのチーズリゾット仕立て」の2品を追加し、ラインアップを拡大した。今回の2品のパッケージは従来の業務用タイプではなく、消費者に商品特徴が伝わりやすい市販用のようなデザインを採用することで、C&C や宅配・通販などの一般消費者に向けた市場を中心に販売する。

「海老トマトクリームグラタン」

「海老トマトクリームグラタン」

ちなみに、同社は長年、フローズンチルドや冷凍のグラタン/ドリアで「Deli-Grande」ブランドを中心とする商品展開を続け、確かなシェアを掴んでおり、このカテゴリーでの製造技術・ノウハウは国内有数と言える。
 
営業本部営業統轄部長代行兼商品企画課長の鈴木智子氏は「コロナ禍で外食へなかなか行けない状況が続き、市販用冷凍食品が伸長する中、市販用として販売してきたわけではないものの『Oliveto』の認知度も高まった。当社は業務用冷凍食品専業メーカーとしてのスタンスを変えるわけではないが、C&C、通販・宅配という伸長するルートに向けた商品開発を行った」と話す。今後、この2品の動向を見ながらではあるが、アイテム拡大も視野に入れており、ここまで商品に対する流通の評価も良好だという。
 
今後の同ブランドの方向性について、鈴木氏は「ブランドとは時間をかけて築き上げるものであり、植竹シェフとの長年にわたる取組みがブランド価値向上につながっている。より一層“『Oliveto』であれば間違いない”という信頼をいただけるよう努めたい。そのためにも、より良いものを作っていくことが、ブランドの評価にも繋がるという気持ちで取り組んでいく」と話した。
 
〈冷食日報2022年3月7日付〉