学校給食で高まる“減塩”需要、ヤヨイサンフーズが「ソルトケア」シリーズ展開

ヤヨイサンフーズ「SCシリーズ」商品
ヤヨイサンフーズの業務用冷凍食品「ソルトケア(SC)」シリーズは、学校給食向けの減塩対応商品として2020年春より展開している。

同社では、学校給食向け商品の基本方針としてアレルギー物質への配慮、原料産地の訴求、不足栄養素の添加を挙げている。それに加え、政府の方針として、学校給食での食塩摂取基準が段階的に引き下げられてきていることもあり、学校給食現場での減塩ニーズへの高まりに応えるための商品開発を行っている。

SCシリーズの開発背景として、文部科学省が2018年8月、学校給食実施基準を一部改正し、給食1回当たりのナトリウム(食塩相当量)の摂取基準が引き下げられたことから、学校給食において減塩対応商品の要望が高まってきたことが挙げられる。

学校給食摂取基準におけるナトリウム(食塩相当量)基準値推移

学校給食摂取基準におけるナトリウム(食塩相当量)基準値推移

学校給食実施基準における給食1回あたりの食塩摂取基準は、段階的に引き下げられてきている。2018年の改正では、給食1回あたりの食塩摂取基準量が8~9歳で2.5g未満から2g未満へ、12~14歳で3g未満から2.5g未満へと引き下げられた。
 
それに対応するため、減塩でありながらおいしさを追求して技術開発に取り組み、2020年春にハンバーグ、餃子、焼売と3カテゴリーで、40~65%の減塩(日本食品標準成分表示2015年〈七訂〉比、以下同)とした「SCシリーズ」を立ち上げ、一挙20SKU(最小の管理単位)の商品を投入した。
 
自らも管理栄養士である営業本部営業統轄部長代行兼商品企画課長の鈴木智子氏は「1食当たり食塩2gという量はかなり厳しく、栄養士さんたちも献立作りに苦慮している。たとえば汁物だけで通常1g近くになる。そうすると残りはメーン+副菜で1gとなってしまう。パン食であればパン自体にも塩分が含まれるためさらに厳しい」と話す。
 
さらに2021年4月、再び学校給食実施基準が改正され、給食1回あたりの食塩摂取基準量が6~7歳で2g未満から1.5g未満へ、10~11歳で2.5g未満から2g未満へと引き下げられている。
 
こうしたことから、学校給食向けの冷凍食品でもさらなる減塩商品へのニーズが高まることも見込まれ、主力であるハンバーグ3アイテム・計10SKUを、配合技術により減塩を維持したまま、より美味しく品質向上を図るリニューアルを行った。
 
鈴木氏は「今春のリニューアルはより減塩にしたわけではなく、塩分量を維持しながらよりおいしくという点に主眼を置いている。前回は減塩に対する評価はかなり高かったが、もの足りないという声も多少あった。減塩商品への要望・ニーズはますます増えており、おいしさでお応えしたい」と言う。
 
〈技術・工夫で「減塩なのにおいしい」を実現〉
言うまでもなく、減塩商品は単に食塩使用量を減らせば良いというものではない。食塩使用量を減らすと、塩味・旨味・食材の風味が弱く感じられるという味覚面と、肉製品で弾力が出づらい・ジューシー感が落ちるという食感面での課題がある。
 
さらに、ヤヨイサンフーズの学校給食向け商品ではアレルギー物質への配慮から、小麦・卵など特定原材料7品目を使わないものが多い(商品による)ため、食感を改善するのはさらに難しくなる。鈴木氏は「ハンバーグで減塩の上にパン粉、卵が使えないのは品質を保つ上でとても難しいこと」だと話す。
 
それを補うため、使用する塩を見直し塩味を感じやすい塩を使用する、香味野菜を活かした風味づけで物足りなさをカバーする、食感を損なわないようつなぎ原料を見直し、ほぐれやすさ、ジューシーさを感じられるようにするといった技術・工夫を盛り込み、減塩でありながら食味・食感を保てるように仕上げている。
 
〈人手不足と感染症予防、学給市場で加工食品ニーズ高まる〉
ヤヨイサンフーズの学校校給食市場向け売上は、直近の2021年4月~2022年1月で前年比112%と伸長している。
 
前年にコロナ禍の影響による休校があった裏年に当たることもあるが、感染症予防のための衛生管理面での優位性、そして慢性化する調理現場の人手不足に対応する簡便性もあり、加工食品のニーズが高まっている。さらには、前述の通り学校給食実施基準の改正があり、減塩商品が求められる環境になっている。同社の学校給食向け商品は、SCシリーズのほかにも、SCを付けていないが塩分量に配慮した「まろやか国産さばの味噌煮」などの「まろやかシリーズ」がある。また、従来からの通常品も引き続き併売している。
 
鈴木氏は「献立作りの考え方もさまざまで、用途に応じて選択していただけるようにしている。学校給食向け商品はアレルギー物質、栄養素とともに塩分にも配慮した商品開発を行っていく。SCシリーズについては市場ニーズに沿って、優先順位をつけながら徐々にアイテム数を拡大していきたい」など話した。
 
〈冷食日報2022年3月23日付〉