ニチレイフーズ パーソナルユース需要に注力、家庭用・業務用ともに商機

ニチレイフーズ・奥村剛飛マーケティング部長
〈家庭用はファミリー世帯にも需要 業務用では3つのロス削減に寄与〉
ニチレイフーズはこれからの伸長カテゴリーとして「パーソナルユース需要」への取り組みに力を入れている。

ここにいうパーソナルユースには、従来の「個食」の概念よりも広い意味を込めている。新型コロナ禍において需要拡大が加速した冷食には、「麺・ごはん類」「ポーションおかず(おつまみ等)」「ワンハンドスナック」「一食完結タイプ」があり、これらの中には“個食”に包摂しきれない商品群がある。

また、例えばファミリー世帯の食シーンにおいても、食べる時間帯や食べるもの、食べる場所が異なる状況があり、これを“パーソナル”という言葉では包摂しきれないととらえ、「全業態に向け、全方位的に、あらゆる世帯層に向けて対応していく思いを込めて、“パーソナルユース”という言葉を使用している」(同社広報)としている。奥村剛飛マーケティング部長はパーソナルユース需要への対応について、次のように説明している。

奥村部長=冷凍食品の2021年度の市場規模(インテージSCI から算出)は家庭用が9,000億円強、業務用は1兆円を超えるが、家庭用・業務用それぞれにパーソナルユース需要は存在すると考えている。

家庭用のパーソナルユースは「単身・単独世帯」と「ファミリー世帯」で想定される。ファミリー世帯では新しい家族の形態として、異なる「時間」・異なる「空間」・異なる「嗜好」からパーソナルユース需要がある。

異なる「時間」について。昨今は小学生の8割が習い事をしている。さらに部活などがあると家族そろって食卓を囲む機会は少なくなっている。異なる「空間」について。例えばリモートワークしながらデスクで食事を済ます、ゲームや動画を見ながら片手で食事を済ませるなど、必ずしも食卓に集まらない食事のシーンがある。そして異なる「嗜好」について。同じ食卓を囲んでいても、肉を食べたい、魚を食べたいなど嗜好の違いによって食べるものが異なる場合がある。

その各々の事情に応じて「栄養バランス」や「簡易オペレーション」「メニューバリエーション」などを提供していく。商品群としては「冷やし中華」など麺類やご飯類、トップシールトレーのポーションおかず、片手で食べられるワンハンドスナック、ウエルネス事業で展開しているワントレーおかずセット――などをパーソナルユースと総称して展開していく。

業務用について。月1回以上デリカを利用する人は、ワーキングシングルの割合が一番高い。業務用も家庭用と同様に単身者の利用が拡大している。福祉給食もデイサービスなどの小規模施設を含め事業所が増えており、外食業態でもマンガ喫茶やレジャー施設などで、パーソナルユース需要を想定する。

パーソナルユース商品の提供価値として、3つのロスの回避を見込める。1つは「タイムロス」、つまり人手不足のなか、調理場の経験がない人でも速やかに食事の提供ができること。2つ目が「食材ロス」、つまり食数のコントロールがしやすいこと。3つ目が「チャンスロス」、簡単なオペレーションだからこそ売場を臨機応変に埋めることができる。

特に福祉給食業態への提供に注力する。セットアップおかずやワンプレートの栄養価の高いメニューなどが、ニーズに合致すると考えている。50床以下の小規模施設では厨房設備が不十分なこともあり、ワンプレートおかずの需要は増えていく可能性が高い。スチームコンベクションに入れるだけで調理できる形態を目指している。

ハレの日のメニューとして監修商品の提供も想定している。今後はウエルネス事業で培ったカロリー・塩分コントロール技術の導入や、サステナブルを意識した容器の開発も行う。業務用パーソナルユース商品の設計の3要素、「おいしさ・栄養バランス・利便性」の三位一体の価値を、当社の強みと合わせて提供していきたい。

新中計「Compass Rose 2024」の中ではパーソナルユースのコンセプトを基軸にしながら、例えば健康、さまざまな素材のアッセンブルなどを含めて商品を展開していきたい。最終的に“冷凍食品が当たり前にある日本の豊かな食卓へ”というところを目指して、商品開発およびマーケティング施策を展開していく。

〈冷食日報2022年6月24日付〉