沢の鶴、ヤンマーとの「酒米プロジェクト」第一弾商品を発売
ヤンマーの新村誠常務執行役員アグリ事業本部副本部長は、「機械化で生産性を向上させるだけではお客の課題を解決できない。これからは、農業の経営計画、土づくり、育苗、収穫から販路の拡大まで、産地から食卓までをつなぐ食のバリューチェーンのトータルサポートが必要だ。今回の“酒米プロジェクト”は、従来の水稲バリューチェーンにおける米契約栽培の提案に、種子開発を加えたソリューションとなる」と説明した。
続いて、山岡照幸酒米プロジェクトリーダーが具体的な説明を行った。「大きな柱として、種子開発、栽培支援、営農支援の3本柱と、5つの主要なソリューションメニューを構築・実践した」と述べた。種子開発については、同社のバイオイノベーションセンター倉敷ラボが名古屋大学との共同研究で、日本酒メーカーの要望やニーズに基づいて行っていく。遺伝資源からゲノム情報と形質情報を選抜し、その種子に対してヤンマーが栽培評価を行い、日本酒メーカーとともに加工評価までを行う。最後に日本酒メーカーが醸造評価を行うことで新しい品種を開発する。その後、ヤンマーのトータルソリューションを生産者に展開し、作物の持つ能力を最大限に発揮し、収量向上や品質安定を図る。
同ソリューションは、日本酒メーカー、ヤンマー、農家の3者契約で、ヤンマーが農家から全量を買い取り、日本酒メーカーに販売する。今回は、岡山と滋賀の2つの農家で計5反の規模で栽培。安定供給という沢の鶴からの要望を受け、ほぼ一般米と変わらない背丈の米を選抜した。今後はそれぞれの日本酒メーカーの要望に合わせた酒米を開発していき、2023年までに清酒メーカー10社と取り組み、酒米生産量のうち10%の獲得を目指すとしている。
〈2019年3月には第二弾商品を発売予定〉
沢の鶴の西村隆社長は、「創業300年のスローガンとして“米とともに300年。これからも。”を掲げた。より一層米にこだわり、米作りや農業にもこれまで以上に関わっていくため、新しいチャレンジをしたいと考えていたことから、ヤンマーと“酒米プロジェクト”を立ち上げた。目標として、日本一の酒米で日本一の日本酒を造る」と意気込みを述べた。
「沢の鶴X01」については、「新しいもの、未知のものを生み出したいという想いと、ヤンマーと沢の鶴が掛け合わさってできたXを表現した。引き続きチャレンジしていくという意味でナンバリングを01とした。ターゲットは、日々の生活、モノにこだわる30~40代の男性をイメージし、プレミアムな日本酒として味わってもらい、所有することにより価値を見出してもらうコンセプトで開発した。純米大吟醸酒で芳醇でフルーティーな香りと上品な香り、ふくらみのある味わいが特徴」と説明。今後のプロモーションとして、7日に商品ブランドサイトを立ち上げ、スーパーマーケットトレードショーには同プロジェクトのブースを出展。また、東京と大阪でリリースパーティーを開催する。
2月8日から沢の鶴オンラインショップで予約受注を開始し、26日から一般販売する。取扱店や料飲店の情報は3月2日から公開する。2019年3月には第二弾商品を発売する。「継続して品種の研究、選抜、酒造適性評価を行い、酒米と日本酒の品質向上を目指す。酒米の収穫量や酒の仕込み量をスケールアップし、販売量を増やし、販路を拡大する」と語った。
〈酒類飲料日報 2018年2月9日付より〉
【関連記事】
・2017年1~12月の清酒出荷数量は1.7%減、吟醸4.9%増、純米2.6%増 初めて純米吟醸酒が本醸造酒の数量上回る
・2017年の清酒の輸出は金額・数量共に過去最高、8年連続で過去最高更新
・1人当たり酒類消費量最多は昨年に引き続き東京、唯一100L越え 前年比では山口がトップで12.9%増
・“酒の造り手の力量を問う米”、途絶えかけた「雄町米」はなぜ復活したか