〈トーク〉剣菱酒造・白樫政孝社長 ブレンドが生む安定の味、どんな料理とも相性70点超を目指す
酒どころ「灘五郷」を率いる若手トップの一人として活躍する剣菱酒造社長の白樫政孝氏は、1999年に同社に入社し、はじめは瓶詰めや酒造りに携わった。5年程経ち企画、その後経営全般に関わるようになり、2017年、父・白樫達也氏の後継として社長に就任した。
剣菱酒造製品
同社の商品には精米歩合の表示がない。その心は、「特定名称にこだわるよりも、味の安定が大切」。清酒の原料となる米の出来には、毎年ブレがある。安定した味を出そうとすると、米の出来によって精米歩合を変えなくてはならない。また、4つの蔵で異なる年に造られた数種類の酒をブレンドする製法も、味のブレを最小限にするためのスキルのひとつだ。
ブレンドの極意は、その味の複雑さにある。「食品とのマッチングの幅広さが、清酒の魅力の一つ」と考える同氏。「食品と酒に共通点があれば、両者はマッチする。苦味のある食品は多少の苦味がある酒に合うし、甘い食品には甘みが強い酒が合う。ブレンドで複雑味を増した酒は、どんな料理と合わせても70点以上がとれる」。そんな懐の深さが、「剣菱」が時代を超えて愛されるゆえんかもしれない。
「日本酒のファンをどうやって増やしていくか。答えは一つではない。ただ、一時的な消費者の嗜好に合わせて商品を変えてしまうと、かえって行き詰まってしまうのでは」と考える。「時代が変化しても変わらないもの」をテーマに、ビジネスセミナーなどで講演することもあるという同氏。変化の激しい世の中だからこそ、変わらない味を守り続ける。
〈酒類飲料日報2020年7月14日付〉