スピリッツ・リキュールでも広がる「家飲み」需要、長引くステイホームに“外飲み”のバリエーションを
料飲店がコロナ禍の影響を大きく受けた2020年上半期、バーから居酒屋まで、店頭注文を主戦場とするスピリッツ・リキュールのブランドの多くが苦戦した。
一方で、家庭用需要の伸びに支えられたブランドも多い。外出自粛要請に加え、在宅ワークが主流になるなか、「家飲み」需要が拡大。量販市場では、ビール類やRTD、ウイスキーの大容量が伸長したが、ステイホームが長引くにつれ、「家飲み」でも、外で飲むようなバリエーションが欲しくなる。
※RTD=Ready To Drink、チューハイ・サワー等のふたを開けてすぐ飲める低アルコール飲料。
家で過ごす時間が増え、料理やお菓子作りを楽しむ層が増えたように、お酒に関してもひと手間かけた極上の一杯に挑戦したいと思う流れは必然だろう。ハイボールはすっかり定着したが、自宅にこもるしかない日々が続くと、セカンドオプションが欲しくなる。ハードリカーやリキュールで選択肢を増やせば、家飲みのバリエーションは広がる。
中でも上半期、大きく伸びたのがジン「ボンベイ・サファイア」だ。アイコニックなクリアブルーのスクエアボトルや、華やかな味わいのファンは多く、コロナ禍でも上期は2桁増を記録した。通販サイトamazonの洋酒総合ランキングでも、大容量のウイスキーやハイボール缶が上位を占める中で、売れ筋ランキングベスト5に入り(2020年9月1日現在)、スピリッツ・リキュールでも堂々のトップだ。
また、ラム部門No.1の「バカルディ」は、同サイト限定「マイモヒートセット」も完売。SNSで展開する「おうちモヒート」効果もあり、家庭用需要が大きく伸びた。
キリンの「ギルビー」(ジン・ウォッカ)や、リキュール「ベイリーズ」も巣籠もり期間における家庭でのカクテル需要に支えられ、上半期はプラスで着地した。家庭用販売構成比が高い「ギルビー」は、ブランドトータルで上半期1%増。なかでもウォッカは、家庭用が約2割増と業務用の減少を補い、3%増となった。
また、「スミノフウオッカ」「ゴードン」「タンカレー」なども、家庭用では15〜20%増で推移。「ベイリーズ」はカクテル需要に加え、大人が楽しむスイーツへのアレンジ素材としても人気で2%増となった。今後は、若い女性を中心にSNSでも話題の「ダルゴナコーヒー」(牛乳の上にふわふわのコーヒークリームをのせた韓国発祥のコーヒードリンク)をフックとしたEコマースの取り組みを進める。
コロナ禍という逆風下での新ブランド発売にもかかわらず、わずか4カ月で年内計画の8割弱を達成したのが、サントリーの国産ジン「翠」だ。ジンというと、バーで飲むカクテルのイメージが強いが、「翠」では、ソーダで割った「翠ソーダ」を「居酒屋メシ」とあわせる楽しさを提案。業務用・家庭用両市場での展開に加え、TVCMも投入し、「新需要の創造」に取り組む。また、家庭でのカクテルづくりなどでニーズが高まるスピリッツ・リキュールの統合提案を、SNSキャンペーンなどを通して進める予定だ。
アサヒビールは8月末、カンパリ社7ブランドを、CT Spirits Japan社に移管した。これを機に、商品ブランドポートフォリオの見直しや集約を進めている。4月には、若年層をターゲットにした個性派リキュール「クラーケン ブラック スパイスド ラム」「サザン カンフォート ブラック」を発売。さらに9月末には、新たなスピリッツ・ブランドの導入を検討している。
〈食品産業新聞 2020年8月27日付より〉