福島県産肉用牛は枝肉で300円の格差、風評被害はまだ解消されず-生産者

日本食肉消費総合センターは17日、有楽町朝日ホールで、“家族の『元気』をささえる ふくしまミート”をテーマとした「ふくしまミートパワーアップ!シンポジウム」を開いた。台風18号による悪天候の中だが約360人が来場、福島県産食肉の安全性、美味しい訳を学ぶとともに、ゲストの元マラソン選手の有森裕子氏らのトークを楽しんだ。また、参加したJAグループ福島肉牛振興協議会の湯浅治会長は、「風評被害は薄れつつあるが、枝肉価格は平均価格に比べkg当たり300円の差があり、1頭では15万円も安い。皆さんに食べていただき、味を知っていただくことが復活への始まりと考えている」とし、福島県産食肉の安全性、美味しさへの理解を求めた。

開会に当たり田家邦明理事長は「当センターは、食肉の栄養、機能、安全・安心について科学的根拠に基づき情報提供している。東日本大震災から6年半が経つが、震災前は同じ価格だった福島県産食肉の価格は、まだ低いのが現状。厳しい検査をクリアした食肉だけが流通するが、生産者にとってはやりきれない思いだ。消費者調査でも風評被害はまだ残っており、今年度からは風評被害の解消に的を絞って取組んでいく。福島県産食肉は日本に誇る優れたものと確信しており、本日参加していただいた皆さんが発信し生産者の努力が報われることを期待している」と述べた。

シンポジウムでは、第1部として福島県農林水産部の白石芳雄畜産課長が「伝えたい、福島の安全とおいしさ」、東京大学の上野川修一名誉教授が「からだに必要な食肉の栄養とおいしさの知識」について基調講演を行った。白石課長は、モニタリング検査により安全が確認された牧草・稲わらのみが給与されている。農家ごとに適切な飼養管理を徹底するため、定期的に県職員が立入りし飼養管理状況や給与飼料の実態把握と指導を行っている。枝肉では県内・県外とも放射性物質検査の全頭検査を行い100ベクレル以下の食肉しか流通させておらず、これまで12万頭以上を検査し基準値超過はゼロだった」と、安全・安心に向けた取組みを説明した。

上野川氏は、「日本人は1年に約0.7tを食べ、その内容が健康と寿命を決める」とした上で、「食肉は健康で長生きするために必要な栄養成分、食物のおいしさのもととなる成分、病原菌や体を守る免疫の働きを保つ成分に富んでいる。食肉のこれらのすぐれた性質を上手に活かした食生活をつくろう」と述べた。

また、第2部では、白石課長、上野川名誉教授とともに、関崎勉東大教授・食の安全研究センター長、生産者代表として福島肉牛振興協議会の湯浅会長、うつくしまエゴマ豚普及推進協議会会員の大沼由弘氏、会津地鶏ネットの酒井毅社長、ゲストパネリストとして元マラソン選手の有森裕子氏(写真㊦)、フリーアナウンサー・アスリートフードマイスターの亀井京子氏(横浜DeNAベイスターズ林昌範選手夫人)が参加し、「家族の元気を支えるふくしまミート」と題してパネルディスカッションを行った。その中で湯浅会長は、「震災で福島牛の評価が下がった。しかし2015年7月の全農枝肉共励会で日本一の名誉賞をいただいた。なかなか正当な評価を受けられない中で、良質な肉牛づくりをあきらめずに続けてきて、やっと評価された。様々なプロモーションを行い、風評被害は薄れていきつつあると考えているが、現状でも枝肉相場は、kgで300円格差があり、1頭当たりでは15万円の差になる。本日集まっていただいた皆さんに食べていただき、味を知っていただくことが復活の始まりだと考えている」と厳しい現状を訴えた。有森氏は、「日本中でここまで検査し、内容を公表している食べ物はない。しかし、“福島”ということで判断を狭めている。来場した皆さんには、今日の内容をさまざまな年代の方に伝えていただきたい」と、来場者に風評被害解消への協力を求めた。