自民党で卸売市場の流通構造について聞き取り、市場協会からは築道副会長が参加
議員らからは、卸売市場法の改正は、再生産可能な価格での販売が可能な形でなければならないとの意見が多数挙がったほか、「食肉市場は、と畜場というお金のかかる部分を担い、四苦八苦されながら食肉流通を担っている。その点をしっかり認識したうえで議論してほしい」「規制改革推進会議では受託禁止の廃止も検討していると報道され、心配されている。農業者の所得向上とは別のことを考えているのではないか」「規制をなくしていくと、大手小売り、卸のバイイングパワーが強くなって生産者が厳しくなるのではなど様々な懸念がある」など、議論の方向性について様々な意見が上がった。影響をしっかりと見定めて議論を進めるべきとの声が多かった。
〈食肉市場では市場法の規制は効率的な流通に支障をきたさない—築道市場協副会長〉
築道副会長は、卸売市場法の見直しについて、「食肉卸売市場の特徴、機能、規制に関する見解など」について説明した。機能として①食肉取引の指標となる価格形成機能②卸売業者から出荷者に翌日までに支払われる代金決済機能③和牛、交雑牛、乳用牛など多様な品質の牛や豚を集荷し、小売サイドに販売する集荷・分荷機能④川上・川下への情報伝達機能――を持つと説明した。
卸売市場法に基づく規制に関する見解としては、「卸売業者の第三者販売の原則禁止などの見直し項目に関しては開設者が定める業務規程において弾力的な対応が可能」「市場業務や効率的な食肉流通に支障をきたしていないのが現状」としている。卸売業者の第三者販売の原則禁止は、現行でも例外的にでき、実際に行われることは少ないとしている。仲卸業者や売買参加者は、食肉の取扱いに必要な営業許可や経験年数、仲卸業者は資力信用を要件として開設者が許可・承認しており、これ以外への販売は、衛生性の確保や代金決済に問題が生じることなどが懸念とした。
仲卸の直荷引きの原則禁止も、同様に現行でも例外的に可能と説明した。商物一致の原則は、と畜場で枝肉に処理した後に卸売され、和牛や交雑牛は個体ごとの品質格差が大きく取引単価の値幅が広く、売買人が直接商品を見ないで買受することは困難としている。
受託拒否の禁止については、食肉の場合は、生きた家畜をと畜し枝肉にしない限り商品とならず、受託拒否は出荷者にとっての死活問題となる。と畜場法でも、と畜場の設置または管理者は、正当な理由が無ければと畜場の使用を拒めないとの規定があることも説明した。卸売業者は業務規程に定める、①伝染性疾病に感染したまたは感染の恐れのある牛や豚などの衛生上有害な物品の場合②と畜場を含む市場施設の許容量を超える入荷が見込まれる場合――に限定して受託拒否ができる。
代金決済は、原則、販売した翌日には代金を決済しており、大多数の生産者にとって安心して出荷できる有利なシステムとなっている。卸売業者の財務の健全性維持を目的とした国や開設者による検査も行っており、市場にとって最も重要な機能の1つだとしている。
食肉市場の課題は、食肉市場が有している公的役割を安定的に維持していくための課題としては、①牛や豚などの生体をと畜・解体するための施設・設備の整備、運営には排水や廃棄物処理に要する費用、水道・光熱費など多額の経費が必要②牛や豚の生体のと畜・解体には、熟練した技術者の確保・育成が必要③HACCP手法による衛生管理の義務化に伴い、と畜場を含む市場全体における衛生・品質管理の高度化のため、専門知識を有する人材の育成が急務――であるとした。
〈畜産日報2017年11月8日付より〉