〈令和元年5月の需給展望 鶏肉〉不需要期に向けてモモは弱気、ムネは回復の展開に
今年の大型連休は異例の最大10連休となった。大手量販店によると、この間、鶏肉の末端消費は、連休前半が全国的に曇りや雨が多く、気温も低めだったことで、モモ中心に多少動いたようだ。だが、後半は気温が高く、新元号の祝賀ムードもあり消費はステーキや焼き肉など牛肉にシフト、販売数量・金額ともに前年実績割れとなった企業もあるようだ。
4月の相場はモモ正肉が月間通してジリ下げとなり、平均相場は東京(農水省・食鳥市況情報、税抜き)で625円(前年比6円安)、日経加重で601円(同6円安)となった。一方、ムネは、これまでの相場が安かったことと、気温上昇に伴って連休向けの引合いが強まったことで、唱えがやや持ち直したが、月間では東京で246円(62円安)、日経加重で232円(63円安)と大きく前年を下回った。
例年、5月は不需要期に入るため、気温上昇に伴ってモモ正肉の引合いは落ち着くパターンが予想される。ただ、今年は大型連休の消費疲れの反動と、運動会シーズンでから揚げの動きも期待できそうだ。ムネも単価の安さとサラダ需要でソコソコの需要が期待できる。豚肉相場の動向次第では、鶏肉の販促も強まりそうだ。5月の相場はプラス・マイナス要因が混在し、モモで東京620円・日経加重で600円、ムネは東京250円・日経加重で240円と予想する。
[供給動向]
日本食鳥協会によると、5月の生体処理羽数・重量は前年同月比0.5%増・同0.4%増と見込んでいる。生産が潤沢だった昨年(羽数で17年比3.0%増、重量で同1.6%増)とほぼ同水準の供給が予想される。地域別では、北海道・東北が0.7%減・0.3%増、北九州地区で1.2%増・0.1%減、南九州地区で1.0%増・0.8%増となっている。ただ、気象庁の季節予報によると、5月中旬以降、平年よりも高い気温が予想されているため、暑さで出荷重量が低下する可能性もある。農畜産業振興機構の鶏肉需給予測でも、5月の鶏肉生産量は13.5万t(前年同月比1.4%減)とわずかに下回ると予測している。
一方、鶏肉輸入量は4.2万t(同10.9%減)とかなり下回ると予想する。前年の輸入量が多かった反動もあるが、ブラジルでは、国内および中国の需要増加やサルモネラ菌の検査体制の厳格化などで供給量が減少、3月末の国内輸入在庫も12.5万t(15.8%減)まで減少している。昨年はトラック業界のストライキもあり、6月にかけて輸入品の現物相場が高騰、逆に夏以降はジリ下げとなった。今年は現地の生産背景が異なるうえに、7月積みのオファーが2,500ドルとさらに値上がりしているため、昨年の経験を踏まえ、今後夏場にかけても極端な輸入増はないと考えたい。
[需要動向]
5月は大型連休の出費増の反動で、食肉の末端需要は落ち込み、単価の安い商材に流れる。その理屈からすれば、食肉では鶏モモ、ムネ肉は追い風といえるが、いま量販店では総菜や味付け肉など簡便商品の品ぞろえを強化しているため、こちらに需要が流れる可能性が高い。「母の日」以外はイベントもなく、とりわけ、相次ぐ食品価格の値上がりや自動車税の納付など、消費者の節約志向は例年以上に強まりそうだ。それでも運動会シーズンでのから揚げや、ムネ肉もサラダチキンを含めたサラダ需要でソコソコの消費は期待できる。副産物では、手羽先は動いているが、ササミ、手羽元、肝関係などは苦戦が続きそうだ。
[価格動向]
このように、5月の相場は上げ下げ要因が混在して流動的な側面もあるが、現状での予想は、モモは需要低迷によりジリ下げで東京620円前後、日経加重で600円前後と前年を上回ると予想される。ムネは東京で250円前後、日経加重で240円前後と4月からわずかに上振れるが、前年より40円程度下回ると予想される。
〈畜産日報 2019年5月10日付〉