〈令和2年6月の需給展望 豚肉〉末端消費は低迷も、出荷頭数減・輸入チルド供給不安で高値維持
令和2年5月の東京市場の豚枝肉相場は、ゴールデンウィーク(GW)明け5月8日には上物税抜き734円を付けたが、その後は中旬にかけて緩み、25日には同525円まで下げるなど月内で大きな価格差が生じた。
とはいっても、月間平均相場では上物税抜きで583円(前年同月比22円高)で、前月から17円値上がりし高値推移となった。需要面では当初、新型コロナウイルス感染症による内食需要の高まりに支えられ、GW明けも量販向けを中心に買い気が強まった。しかし、その後、全国的に緊急事態宣言が解除されたことに伴い、需要は徐々に縮小した。
6月は例年、出荷頭数が減り、相場は高値に転じる時期であり、実需と相場の乖離が一段と進むものとみられる。さらに、経済不安による消費者の購買力低下で、スソ物など安価な部位が荷動きの中心となり、今後、末端需要が大きく盛り上がることは考えにくい。
そのため、高値で推移する枝肉相場も2週目以降息切れし、唱えが下落する可能性もある。しかし、出荷頭数の減少や、輸入チルドの供給不安が本格的に影響を及ぼしてくることなどを鑑みると、全体を通して下げ要因は少なく、6月は上物税抜きで570~580円(税込み620~630円)と予想される。
〈供給動向〉
農水省の肉豚出荷予測(5月18日発表)によると、6月の肉豚出荷頭数は前年同月比4%増の125.7万頭と予測している。6月の稼働日1日当たりの出荷頭数は22日稼働で5.7万頭前後で推移するとみられる。全国的にみれば前年を上回る予測だが、例年、夏にかけて出荷が細ってくる時期であることに加え、関東圏ではPEDの影響が残るなか、梅雨入り前の猛暑日も予想され、産地では増体不良などで出荷遅れの懸念も高まっている。
農畜産業振興機構が5月27日に公表した豚肉の需給予測でも、6月の出荷頭数は同3.5%増の125.7万頭で、豚肉生産量は6万8,500t(同2.2%増)と前年を上回る見込みだ。一方で、6月のチルドポーク輸入は同20%減の2万5,600tと予測。新型コロナウイルスの影響よる北米の現地工場の稼働停止に伴う減産から、前年を大きく下回る見通しだ。
〈需要動向〉
5月は、14日に47都道府県のうち39県で、25日には東京都を含む全国で緊急事態宣言が解除された。外食業態では営業を再開する店舗が多くみられるが、新型コロナの“第2波”を懸念し慎重な動きが続いており、外食向けの引き合いはコロナ以前までの水準には至っていないようだ。一方で、内食需要の高まりにより好調だった量販向けも、徐々に落ち着きをみせはじめた。
輸入チルドの供給不安もあり、量販店などでは在庫を多めに手当てしていたが、ここにきて需要自体がトーンダウンしたことで、ロースやカタロース、バラなどでは投げもみられ、逆に余剰感がではじめている。消費者の購買力低下により、売れるのは切落としや小間材といったスソが中心となっている。
6月は学校の再開による学校給食への引き合いなどが期待されるものの、例年、需要が落ち込んでくる時期であり、量販を中心に需要が盛り上がる期待は薄い。しかし、輸入チルドの供給減が、現実問題としてどこまで影響してくるかによっては、一部アイテムで国産にシフトすることも考えられる。
〈価格見通し〉
6月1日の東京市場の上物相場は税抜き581円(税込み627円、前市比22円値上がり)を付けた。関東3市場平均では税抜き566円で前日比6円安となっている。6月は上述の通り、末端需要の不振から枝肉相場は下げても不思議ではないが、出荷頭数の少なさや、輸入チルドの供給不安を背景に、このまま高値維持するものと予想される。
出荷頭数次第では、再び600円を上回る展開もありそうだ。このため、月平均では上物税抜きで570円~580円(税込み620~630円)と予想する。だが、第2波への懸念など新型コロナの状況によっては今後の末端消費の動向が大きく変わることも大いに考えられ、波乱含みとの見方もある。
〈畜産日報2020年6月2日付〉