羊ミルクの“ペコリーノチーズ”を身近に、常温保存の粉チーズ「芳醇ペコリーノ」、家庭の食卓に登場へ
日本にある粉チーズはアメリカ産のパルメザンチーズが市場の大半を占めており、家庭用はその中でも商品の選択肢が限られる。またその中でも、要冷蔵と常温保存とに分かれ、常温の商品はさらに限られたラインアップだ。
コロナ長期化で家庭で食事する回数が増える中、チーズの消費量も増えており、粉チーズについてもパスタやリゾットでの出番が増えている。この状況下での登場(3月発売)とあって、料理のバリエーションを広げるアイテムとして注目されている。
ロマーノチーズとは、約2,000年前にイタリアのローマ近郊で生まれた、超硬質で力強い香りとコクが特徴のチーズ。ペコリーノ・ロマーノは、羊のミルク独特の甘い香りと、白っぽい色が特徴。
ペコリーノを使った代表料理にローマ発祥の「カルボナーラ」がある。日本ではイタリアレストランのパスタメニューなどで馴染みはあるものの、家庭で同じように料理に使うには、塊(かたまり)をカットして売っているものを購入し、すりおろすしか手段がほぼない。そこで、「ペコリーノチーズをもっと身近に使えるようにしたい」と、日本でチーズの輸入・販売を行うエフ・アール・マーケティング(東京都港区)が常温保存の粉チーズとして商品化に動いた。
原料チーズは、イタリアサルデーニャ島で2000年以上前から造られている歴史あるチーズ、ペコリーノ・ロマーノDOPを使用。輸入後、日本で世界各国のチーズを加工するユニオンチーズ(神奈川県厚木市)で、常温流通・常温保存できるパウダーへ加工した。商品名は「芳醇ペコリーノ」。40g・参考上代税抜500円と、80g・850円の2品揃えた。賞味期限は180日。
「芳醇ペコリーノ」の最大の特徴は、原料を常温保存用に乾燥させても、しっかりと残る羊乳特有の甘みとコク、強い塩気。これを家庭のパスタ料理やサラダなどにかける・からめる・温めるなどして、「ひと振りでレストランの味に!」というのが、「芳醇ペコリーノ」のキャッチフレーズだ。
なお粉チーズ市場については、レストラン、ベーカリー向けなど業務用が圧倒的に多い。家庭用については2019年度が前年比4%増の2100t(日本輸入チーズ普及協会調べ)。2020年度は新型コロナウイルスによる巣ごもり需要、パスタ需要増に伴いさらに伸長し、家庭用粉チーズ代表のパルメザン(常温含む)のPI値(レジ通貨客1000人あたりの購買指数)は、20年4月~10月で前年比9%増の1.98(日経収集店POS調べ)となっている。
粉チーズは、数ある家庭用チーズの中で、料理に最も簡単に取り入れやすい。振りかけるだけの手軽さと汎用性があるからだ。2013年にはアメリカ産のロマーノチーズを使ったカレー専用粉チーズ「クラフトヴァッキーノ・ロマーノ」が日本で発売されたが、「クラフトパルメザン」の姉妹品には育ちきらず、その後終売となった。
しかし近年の粉チーズは、粗削りやトリュフフレーバー入りなど、形状や味のバラエティ化が少しずつ進んでおり、ペコリーノ・ロマーノが入り込む余地も十分あるとみられる。
「輸入チーズは店頭にただ並べるだけでは売れない。コロナ禍で試食販売ができない中で、食べ方や使い方が分かるような提案型商品が必要。今回の『芳醇ペコリーノ』は提案型商品の第1弾であり、家庭で食事する回数が増える中、いつもとひと味違う味わいを楽しめる粉チーズとして売り出していく」(近藤功一エフ・アール・マーケティング社長)。
メインとなるのは筒状容器の40g・80gだが、小袋入り2g・3g・5gもあるという。ファストフードに熱々のフライドポテトに添付の小袋入りのスパイスやハーブなどをふりかけて食べるメニューがあるが、このようなアレンジなど、常温の粉チーズだからこそ使い道がいろいろ出てきそうだ。