【米穀VIEW910】先物はコメ需給に「著しい支障」を与えるか21 大阪堂島商品取引所・岡本安明理事長インタビュー
今年8月7日に到来するコメ先物市場二度目の試験上場期限をめぐり、改めて先物の是非を検証する連載。今回は趣向を変え、本丸である大阪堂島商品取引所の岡本安明理事長にインタビューした。
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–72年ぶりの復活から約4年。ここまでの試験上場期間を振り返っていただけますか。
岡本 出来高・取組高が思ったほど増えていないというご指摘は頂戴しますし、それは事実だと思います。試験上場なり本上場なりの認可要件の1つでもあるわけですから、増えて欲しいのは事実ですが、しかしある意味、これでいいと思っている側面もあるのです。良い言い方をすれば、これ以上はないくらいの「安全運転」ではなかったかと。
「堂島米会所」が出来て、明治時代に2年ほど途切れたこともありましたが、209年もの時間が流れています。その後、72年も開いて復活。それを思えば、2年や4年で活発化すると考えるほうがおかしいのではないでしょうか。これが金融商品だったら、4年もやってこの程度の実績では明らかにスクラップ&ビルドの対象になっていたでしょうが、モノがコメなのですから、全く事情が違います。日本人にとってのコメ、しかも先物。堂島のコメ先物が、世界的にみても先物の始まりであることは、むしろ日本以外の国で知られている事実です。
例えばシカゴを訪れると、「大阪からやってきた人に教えることは何もない。うちはDOJIMAをモデルにした取引所だ」と言われます。また一昨年できた中国・鄭州の取引所を訪れた際は、堂島が発祥の地である事実を「本に書いてあるから、そうなのでしょう」と渋々ながら認めていました(笑)
そうしたことからしても、4年でやめてしまうわけにはいきません。「もう4年」ではない。「まだ4年」なのです。例えば不認可になったタイミング(2006年)。まだ取引員も景気が良かったあのとき「認可されていれば」という口惜しさは、皆さん口にされますが、しかし、もしもあのとき認可されていて、それこそ一部に危惧されている価格の乱高下などということが起こっていたら、4年ももっていたかどうか。そう考えれば、安全運転の4年間で良かったと思っています。コメは、それだけ長いスパンで考えなければならない先物商品なのだと思います。
–すると、試験上場の延長か本上場かは別にして、何より続けていくことが大事?
岡本 その通りです。もちろん今回、本上場を申請したい気持はありますよ。今やらずにいつやるのか、という思いは確かにあります。でないと2年に一度、検証委員会をはじめとした非常に労力を割かれる作業を繰り返すことになります。我々もそうですが、取引員だって疲弊していくでしょう。ここで(本上場を実現することで)終わらせたいという思いは確かにあります。
ちょっと穿った言い方かもしれませんが、逆に試験上場の延長の繰り返しがもたらす良い側面もないでもありません。検証委員会の存在です。様々な立場の方が集まって先物のことを議論しあう。そうした場が定期的に開かれるのは、理解を進める上でも非常に良いことだと思っています。
しかし、それでも優先すべきは、市場の維持・継続なのであって、あくまで安全運転に徹していくことが大事です。4年では、理解もなかなか進みません。
–まだJA系統が反対し続けていることも含めて、理解が進むには確かに時間がかかりますね。
岡本 そうですね。もともと先物や投機に対するイメージの悪さは日本独特のものです。例えば欧米では、「先物をやらないことこそ投機」が常識化していますが、日本では先物イコール投機。見回してみると、先物に対して悪印象を抱いているのは、比較的年配の方が多くはないでしょうか。若い世代は比較的寛容です。面白いことにこの悪印象の世代間ギャップは、隔世で来ます。
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