【米穀VIEW942】漂流する米政策Ⅴ 第3次安倍内閣「信任」23 参院選意識した自民、飼料用米めぐり中長期的な論議
自民党は7日、農業基本政策PT(宮腰光寛座長=衆・富山2区)会合を開き、平成28年産飼料用米の進捗状況を論議した。自民党論議としては意外なほど先鋭的な意見が俎上にのぼり、多分に参院選を意識したものではあるものの、平成30年産以降を見据えた異例の「中長期的な論議」となった。
席上、農水省と全中が進捗状況を報告。といっても数値的なものは一切なく、「いかに熱心に取り組んでいるかのアピール」に終始した。このなかで柄澤彰政策統括官は、平成27年産で過剰作付が2番目に多かった茨城県が28年産でその「完全解消」を打ち出した点を「業界内では〝茨城ショック〟と呼ばれている。非常にありがたいこと」と紹介。また「需要に応じた生産推進重点キャラバン」(計33県が対象)のなかで、平成30年産に向けた不安や疑問の声が多く聞かれたことから、その『想定問答集』を作成、議員にもこれを活用するよう訴えた。全中からは、田波俊明副会長(水田農業対策委員会委員長)が「飼料用米は仏さんのような存在。毎日手を合わせて拝みたいくらいだが、どうもまだ魂が入っていない気がする」と秀逸な表現。しかし、その後の〝平場〟論議は、報告などそっちのけのやりとりとなった。一部省略するが、こんな感じだ。
今村雅弘氏(衆・比例九州)「私は水田農業振興議員連盟の会長でもあるので、その立場で発言させていただく。第1に、飼料用米に本気で今後も力を入れていくべきなのか。私は必要最小限でいいと思っている。仮に基本計画に示された110万t目標を達成するためには、2,000億円の助成をつぎ込まなければならない。納税者の理解を得られるか。本当に(助成を)保証できるのか不透明。第2に、(主食用の)米価は下げるべきだ。アメリカが米を買え買えと言ってくるのは、日本に売れば儲かるからだ。米価を下げてやればそんなことも言わなくなる。コストを下げて、米価は下げ、しかし農家の所得は下げない。むしろ上げる。同じ予算なら(飼料用米ではなく)そちらに使うべき。飼料米は『ドリンク剤』のようなもの。当面は仕方ないが続かない。そういう方向性も頭に入れておくべき」
上月良祐氏(参・茨城)「今村先生のご指摘はごもっとも。しかし、今や米価を支えているのが飼料用米であるのも事実。その仕組みをサステナブルにしていく必要がある。むしろ、いったん飼料用米というアクセルを踏むと戻らなくなることを心配している。だから同時にコスト低減は必要だ」
簗和生氏(衆・栃木3区)「飼料用米が、主食用米の需給調整用としてしか議論されてこなかったことに問題がある。畜産側でしっかり使われていることも議論すべき」
赤澤亮正氏(衆・鳥取2区)「私は(自民党が)野党時代、(民主党の)戸別所得補償と戦ってきた。その際、飼料用米で出ていた話は、畜産側からの話。大抵の国は飼料を国産穀物で賄っているのに、日本の畜産は異常で、輸入に頼っている。最も得意な米を自給飼料に使っていない。本来、米で家畜を養うのが最も競争力を高める道だ。別に米の需給調整ありきではない。そこのところを間違えるべきではない。飼料用米の潜在需要450万tは、米の側の都合ではなく、今は450万t分のカネを外国に払っているということにつながる。そのあたりの説明をしなければ納得されまい。また〝猫の目農政〟と言われないようにしないといけない。2025(平成37)年110万t目標を掲げた基本計画は、閣議決定したのだ。ブレるべきではない。どれほどコストを下げても助成ゼロは無理だし、(主食用の)消費が増えるとも思えない。現実を直視すべき」
多分に今夏の参院選を意識したものとはいえ、平成30年産以降をにらんだ議論へと移行しつつある点は特徴的。現場からの声も含め、共通した不安・懸念は、「最大10a10.5万円の助成をいつまで続けられるか」だ。この点、宮腰座長が「いま参院選に向けた公約を幹部で検討中。正式決定は5月だが、方向性として固まりつつあるのは『恒久的な予算確保』だ。平成30年産を迎えても、飼料用米を含めた枠組みを変える必要は全くない」と発言している。平場からは「金額を示すべき」との声もあがったが、真正面から答える者は誰もいなかった。なお小泉進次郞農林部会長(衆・神奈川11区)は「飼料用米は、自給率向上と畜産のブランド力強化のサイクルにどう組み込めるか。できれば説明がつくと思っている」と発言している。