とりまとめ案を大筋了承、4月正式決定へ/五輪組織委パーム油調達WG
東京五輪組織委員会は9日、持続可能な調達WG(ワーキンググループ)を都内で開き、パーム油調達基準のとりまとめ案を大筋で了承した。
日本植物油協会(日油協)・油糧輸出入協議会(油糧協)といった事業者側委員と、WWFジャパンなど民間団体側委員との間で、鋭く意見が対立していた、生産現場の認証のあり方については、政府認証のMSPO(マレーシア)、ISPO(インドネシア)と、民間認証のRSPOについて、いずれも実効性の面で課題はあるとしながらも、小規模農家を含めた幅広い生産者の取り組みを後押しする観点から、3つの認証制度は並列の形で、それぞれの認証パーム油を活用できると明記した。さらには、3つの認証制度以外でも、組織委員会が同等と認めた認証パーム油も活用できるとしており、法令順守・環境保全・先住民族の権利保護・適切な労働環境の確保といった一般基準を満たしていれば、原則として排除しない考え方が盛り込まれた。政府認証を排除して、RSPOに限定すべきと主張していた、民間団体側委員の主張は完全に退けられた形となる。
とりまとめ案は今週中に意見募集の手続きにかけられ、その結果を踏まえた上で、4月上旬に開くWGで正式決定される見通し。
〈パーム油生産国の自立的努力に着目、切磋琢磨でよりよい制度に〉
今回WGでの審議は、認証のあり方を巡って激論が交わされた前回と打って変わって、WWFジャパン自然保護室次長の小西雅子委員が欠席(WWFジャパン橋本氏代理出席)した事もあって、淡々と進行した。
事務局によるとりまとめ案の説明を経て、油糧協専務理事の井上達夫委員が最初に発言した。井上委員は、とりまとめ案を支持するとした上で、「各認証制度は改善の余地は多くあるという議論がなされてきたが、3つの制度が補完し合う形で機能すると考えている。それぞれの制度を拒絶せずに取り組みをサポートし、切磋琢磨することで、よりよい制度となることを期待したい」と述べた。
さらに、パーム油への消費者の認識が低いことに関連して、「日本では油を使うほとんどの食品に加え、あまり知られていない用途にもパーム油が使われている。そのため(調達の)選択肢や価格の柔軟性が無い油は使われない。事業者も消費者も容易に受け入れられる形にする必要がある。商社がパーム油を調達する場合、取引価格について納得することができなければ、ユーザーに説明ができないし、ユーザーも消費者に説明できない。コストの透明性は必要だ」と強調した。
小西委員の代理で出席した橋本氏は「私どもの意見は、なかなか反映されていないというのが正直な感想だ。運用が始まったばかりの(政府認証)制度については、大きな問題があった場合は(調達基準から)落とすくらいの事が必要ではないか。認証制度の部分については慎重な議論が必要なのではないか」と発言した。
日油協専務理事の齊藤昭委員は、とりまとめ案に賛意を示した上で、「RSPOが一定の成果を上げたことは評価している。しかし、一定の高い認証ハードル、コスト面でのハードルを示し、順位を付け、差別化し、競わせることは生産的ではなく、徒労でしかないと考えている。ハードル以上のサステナブルを図るだけでは、パーム油生産国全体の取り組みにつながらない。今は生産国がMSPOなど自らの認証制度を立ち上げ、全力を出して努めていることに着目する必要があり、RSPOも含めて切磋琢磨して競えばいいのではないか。こうしたアジアの国々の自立的努力を、同じアジアの日本が東京五輪の場で評価することは、環境サステナブルのコペルニクス的転換だと高く評価されると考えている」との見解を示した。
〈大豆油糧日報 2018年3月13日付より〉
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