食品ロス削減で商習慣検討WG活動報告、日配品はパンを対象に検討、予測生産から受注生産へ/流通経済研究所
流通経済研究所が事務局を務める、食品ロス削減のための商習慣検討WG(作業部会)はこのほど、日配品、加工食品それぞれの検討会が、18年度活動報告をまとめた。食品ロスの削減に加えて、食品流通・物流環境の改善に向けて今後の取り組むべき方向性を調査・検討結果に基づいて提言している。
そのうち日配品の検討会では、パンを対象に食品ロスの発生メカニズムを整理すると共に、製販双方にメリットがあり、フードチェーン全体で廃棄削減につながる方策や情報共有のより良い在り方を検討した。
活動報告では、今後の取り組みの基本的な考え方として、予測生産が多くを占める「前日店舗発注・翌日1便納品」が、メーカーで多くの未出荷廃棄が生じていることから、予測生産から受注生産に変更できる環境構築のため、需要変動の大きい新商品・特売品、販売先が限定されるPB商品は、小売事業者が事前に発注予定数量の情報提供を行うと共に、実際の発注のギャップを最小化するための工夫を講じることが必要としている。
合わせて、需要予測を前倒しした場合は在庫の売れ残りリスクが高まることが想定されるため、小売事業者側のメリット・デメリットを整理した上で、実施可能かどうかを協議する必要があるとしている。
〈前日発注・翌日納品はメーカー未出荷廃棄多い、小売の需要予測高度化を〉
同検討会にはメーカー委員として、山崎製パン、フジパン、敷島製パン、小売業委員として、イトーヨーカ堂、サミット、ファミリーマート、コープデリ生活協同組合連合会の担当者が出席したほか、学識経験者、関連団体、農水省の担当者も参加した。
始めに、パンの食品ロスの発生実態・構造に関して意見交換を行い、メーカー側は予測生産では多めに生産するため、売れ残り・未出荷廃棄が発生することを挙げた。委員を務めるパンメーカー3社の提供資料を基に、試算した結果では、前日発注・翌日1便納品は、売上構成比は17.7%にとどまるのに対し、未出荷廃棄金額の構成比は46.5%に達しているとした。とりわけ発注から納品までの時間が短い場合ほど、余剰生産・廃棄が生じやすいことや、その大半は新商品で、定番品はほとんど発生しないことを補足した。
他方で小売業側は、販売予測と実需がかい離すると売れ残りが発生するとし、菓子パンは廃棄が生じやすいこと、小さい店舗ほど需要が読みづらく、ロス率が高いとした。
これを踏まえ、パンの食品ロス削減のためには、小売業での発注精度を高め、メーカーはなるべく早く確定情報に基づいた受注生産を行うことが望ましいとの仮説から、気象や曜日、トレンド変化を踏まえた需要予測モデルに基づき、都内のスーパーで納品1日前と同2日前の数量予測の精度を比較検証したところ、大きな違いは無いとの結果が得られ、需要予測を納品前日から前々日に切り替えても、その精度は担保されることが示唆されたと評価した。
さらに、パンメーカー3社の提供資料を基にした試算では、納品前日発注を前々日発注に切り替えれば、約75%の未出荷廃棄金額の削減が期待できるとの数値が得られた。
こうした検討を踏まえ、同検討会では、予測生産から受注生産に変更できる環境構築を基本とすべきとの考えを確認した。しかし、小売業側の委員は、それに異論は無いとした上で、需要予測の高度化と発注前倒しにはシステム変更と、そのコストが必要となり、小売側になんらかのメリットが必要といった意見が示された。また、小売業全体が統一ルールとして、発注早期化を進めようということになれば、変わると思うとの意見もあった。
パンメーカーの委員は、予測生産の数量を減らすと安定供給に影響するため、やはり確定発注を早期にいただくのが望ましいといった意見や、メーカーにおけるロスと小売におけるロス、両方考える必要があるとの意見が示された。
〈大豆油糧日報 2019年4月9日付〉