MSPOなど認証パーム油の積極的活用を期待、RSPOだけではマレーシアのパームの調達コストアップに/日油協・油糧協

大豆油糧日報 2019年8月7日付
日本植物油協会(日油協)と油糧輸出入協議会(油糧協)は8月1日、東京都中央区の油糧輸出入協議会で、MSPO・RSPOのサステナブルパーム油についてのマレーシアへの合同派遣団出張報告を行い、日本植物油協会の齊藤昭専務理事と、油糧輸出入協議会の井上達夫専務理事が出席した。齊藤専務理事は、「将来に向けて、サステナブルなパーム油の利用促進とその社会的コスト低減に向け、RSPOに加え、MSPOなど多様な認証の積極的活用が期待される」と総括した。

説明によると、サステナブルのパーム生産の基準については、東京五輪組織委員会のパーム検討で明らかになったように、RSPOとMSPOで甲乙つけがたいものとなっている。異なっている側面として、MSPOはRSPO並みのレベルを確保しつつ、小規模農家にも基準を守りやすいように、シンプルな構成になっていること、その実効確保のための財政面での援助、法律的強制の両面が接近しようしていることした。

また、RSPOには多様な認証スタイルがあり、調達の困難さなどを踏まえたプレミアムが付加され、社会的コストは極めて膨大となっている。そのため、RSPO認証システムだけに任せていたのでは、マレーシアのパームの調達コストアップとなってしまう現状がある。プレミアム発生の最大の要因は、サステナブルなパームを作る農家、農園が分散的に存在しており、分離調達していくことに伴う経費がその背景にある。

そこでマレーシア政府は、基準を満たさずに放置されていた小規模な農家や農園に財政面での支援と法的強制の両面を活用し、枠組みに取り込み、これまでの「点」ではなく、「面」での調達にシフトさせることで、全体としての社会的コストダウンを図ろうとする制度設計を行っているという。

〈RSPO本部は「プレミアムという概念自体がなくなることを目標」と回答〉
5月28日、29日のマレーシア現地調査では、RSPO本部、MPOB(マレーシアパームオイル庁)、MPOCC(マレーシア政府機関)を訪問した。

日本側からRSPO本部へのプレミアムに関する質問に対し、「RSPOはプレミアムに関与していない。プレミアムはマーケットが作り上げているもの。RSPOも目標としているのは、いつの日かサステナブル油しか生産されなくことで、プレミアムという概念自体がなくなることを目標としている」と回答があったことを明かした。

また、RSPOとMSPOは協力関係にあるのかという質問に対し、「一緒にミーティングや監査も行っている。MSPOを対立関係にあると認識したことはない。最終的には全ての農園がルールに則ってサステナブルに生産できるようになることが目標と考えている」という認識が示されたという。

井上専務理事は、「一昨年の東京五輪組織委員会で認証油の定義が作られ、その時にすでに動いていたRSPOが入った。MSPOとISPOは制度として問題はないが、証明書はまだ作られておらず、条件付きで入っていた。昨年から合同のミッションを派遣し、MSPOとISPOの現状を調査している。約束通りマレーシア政府が動き始めて、現物の動きが始まっているかを確認することが今回の出張の目的である。マレーシア政府は今年中に100%まで持っていくと宣言している。一方、ISPOは遅れており、24年か25年になるとコメントを出している。ただし、ボランティアでISPOも動き始めていると聞いているので、8月中旬にインドネシア政府を訪問し、確認を行ってくる」と、これまでの経緯と今後の予定を説明した。

今回の出張で印象的なこととして、「マレーシアの個別農家は65万戸もあるので、MSPOはグループ制を採用している。RSPOも昨年から同じグループ制の動きをとっている。すべての農家をお互いにカバーするのは難しいので、RSPO本部としてはMSPOの理念やルールを認めて一緒に取り組もう、お互いの良いところに従って、協力、提携していこうと言っている。日本で聞くようなRSPO以外は認めない、という話はなかった」と振り返った。

〈大豆油糧日報 2019年8月7日付〉