“豆乳アイス”や“ヴィーガン”流行で大豆に脚光、肉・チーズ・バターなどの代替食品が続々、“ホット豆乳”提案も活性化
大豆は、昔から畑の肉と呼称され、いまやその健康価値がある程度認知されてきたが、完全菜食主義と言われるヴィーガンといった新たな食スタイルの流行の波にも乗る形で、植物性素材の代表格である大豆の価値がさらに高まるのは間違いないだろう。
〈豆乳生産量は10年連続で伸長〉
豆乳市場は絶好調だ。市場の大部分を占める“白物”(無調整、調製豆乳)が、用途の広がりで続伸するとともに、豆乳飲料も、昨夏から話題になったパッケージのまま凍らせる「豆乳アイス」により需要が増加している。
日本豆乳協会の統計によれば、豆乳全体の生産量は2009年から10年連続で伸長しており、今年についても、1~6月累計で前期比11.8%増の約19万2500klと好調な進捗だ。年間生産量40万klの大台が視野に入る。“白物”は、冷たいコーヒーに混ぜたり、さまざまな料理に使用したりと、用途が着実に広がり、ライトユーザーからリピーター層への移行がみられる。
豆乳飲料のここまでの動き(1月~6月)も、「豆乳アイス」が昨夏に劣らず盛り上がりを見せ、急激に生産量が拡大した前年同期を超える実績となっている。飲料である豆乳は上期(4月~9月)の構成比が大きい。ただこの秋冬は、豆乳を手軽に電子レンジで温めて飲む新たな提案が活性化しており、下期の需要創出が期待されている。
豆乳大手のキッコーマンとマルサンアイは、豆乳飲料の新製品でホットを提案
〈ひきわり納豆が好調、新機軸商品「あらわり納豆」登場も〉
納豆は、2018年度は価格改定があったが、健康志向を背景に、底堅い需要に支えられ前期を超えて着地した。2019年度については、8月は猛暑の影響と、メディアによる話題投入が活発で異常値ともいえる好調だった前年の反動減による苦戦が見られた。しかし、9月に入り盛り返しを見せており、概ね良好な状況と言える。
ひきわり納豆は依然、需要が高い。今期も、通常のひきわり納豆より粗くひいた新機軸商品「あらわり納豆」の投入や、各社が王道のご飯にかける以外の提案にも取り組んでおり、まだまだ市場活性化が期待される。他方で、国産大豆使用商品が売り場で存在感を高めている中、平成30年産の納豆用小粒大豆は、北海道産を中心に高値がつけるなど原料面で懸念材料もある。メーカーによっては、「今後の動向によっては、産地のスイッチなど、対策を検討する必要がでてくるのではないか」と注視している。
あずま食品「ごろっとあらわり納豆」は通常のひきわり大豆の6~8分割に対し、4分割の大豆を使用
〈大豆素材の代替食品も続々と誕生、インバウンド需要に期待〉
大豆たん白は、冷凍食品のハンバーグやメンチカツなどの素材として需要が伸びている。日本植物蛋白食品協会がまとめた2018年の粒状大豆たん白生産量は前年比4.3%増と伸長した。特に大豆の青臭さを抑えた商品が好調で、畜肉相場が高止まりする中、配合アップによるコストダウンも可能にしている。
大豆ミートはもちろん、大豆を中心とした植物性素材において一日の長がある不二製油は、大豆由来のマスカルポーネチーズに続いて、使い勝手の良いバターのような素材「ソイレブール」の本格販売を開始した。
J-オイルミルズが1985年に販売開始した、大豆たん白をベースにしたシート状の食品「まめのりさん」は、北米向けの輸出を中心に販売し、毎年、前年実績を超えて伸長を継続。昨年からはNon-GMO、グルテンフリー、エッグフリー、ヴィーガン対応であることを表記し、改めて注目を集めている。
大豆を使ったお肉不使用「ゼロミート」を展開する大塚食品によると、日本における肉代替品の市場は、2022年には、2016年比76%増の254億円規模になると予想されている。また、世界中でヴィーガンやフレキシタリアン(準菜食主義者)が拡大しているが、2020年には4000万人が見込まれる訪日外国人客の5%はヴィーガンを含むベジタリアンとも推定される。大豆由来の幅広い食品は、それらインバウンド需要を取り込むことも期待される。
左上=不二製油「ソイレブール」、右上=大塚食品「ゼロミート チーズインデミグラスタイプハンバーグ」、下=J-オイルミルズ「まめのりさん」使用メニュー