食糧生産システムを開発中、社内環境整備と両輪でプロジェクト推進/フジワラテクノアート〈サステナビリティの取り組み〉
第一の柱「次世代醸造プラントシステムの開発」は、健康に資する醸造食品の品質と生産能力を向上させること、また、環境に配慮した醸造プラントシステムを構築することを目指すもの。数値計測による品質管理や設備の操作機能の改良において、AIやIoTなどの最新技術の導入も視野に入れている。また、省エネや廃棄物・CO2の大幅削減といった環境配慮型のプラント開発も進行している。
第二の柱は「微生物ノウハウに基づく食糧生産システムの開発」だ。粉体殺菌技術を駆使して安心安全の食品生産を追求することや、微生物の力を利用した食品原材料の製造装置を開発することなどを内容とする。「粉体殺菌」とは、生麺類、各種惣菜、デザート類など、粉体原料を中間原料として製造する食品を、原料段階で可能な限り減菌するプロセスだ。同段階で粉体殺菌を施すことで、流通段階や保存段階での雑菌の増殖を防ぎ、賞味・消費期限を延長できる。
16年発売の「ソニックステラ」は、殺菌媒体として安心安全な水蒸気を使用し、約0.2秒という超短時間加熱処理、瞬時減圧による殺菌で、原料品質を損なわずに粉体殺菌を可能にする。同技術は、醸造の原材料処理段階で穀物を蒸煮する際に培われた蒸気のハンドリング技術をベースに開発された。同機は既に、国内のだし粉末メーカーや中国の漢方薬メーカーで導入されている。
SDGs重点項目の「飢餓をゼロに」に貢献し得るもう一つの象徴的開発が、「機能性飼料の開発」だ。これは、製麹で培った固体培養技術を飼料に活用し、家畜の増体や免疫力の向上を図るもの。飼料効率が上昇し、同量の餌でより多くの肉が得られることから、懸念される食肉需要のひっ迫に備えた技術といえる。県内外の高校・大学の協力のもと、同社で製造したサンプルで家畜への給餌テストを実施するなど、他機関と協同して進行している。
第三の柱、「微生物による新素材生産システムの開発」は、微生物のバイオプロセスの応用により、バイオプラスチックなどの有用素材を生産する試み。大学の研究室を交えて、化石資源によらないバイオ素材生産の産業化を開発研究している。三本柱の中で最も長期的なビジョンで進行している開発だが、実現すれば持続可能な消費と生産に役立つ技術となる。
〈食堂改革など働きやすい環境整備〉
同社では、「社員の健康は会社の財産であり、未来へ大きく飛躍していくための原動力」との考えのもと、健康経営に特に力を入れている。食堂改革をはじめとして、トレーナー指導による朝礼後の体操実施、食事指導や体の不安についての相談を受けられるパーソナル相談会、ストレスチェックなど、健康経営に関する取り組みを行っている。これらが評価され、岡山県内の企業で初めて、日本政策投資銀行から「DBJ(日本政策投資銀行)健康経営格付」の認定も受けた。
オシャレな和モダン空間にリニューアル社員食堂
また、全国有数の待機児童数で子供を保育園に預けるのが困難な同県において、子育て世代支援を目的に、企業主導型保育園と企業契約を締結した。ダイバーシティを活かす組織づくりに注力し、現在は約20%を占める女性社員のうち、技術職の理系女子(リケジョ)も増えている。人事制度の刷新やワークショップなどを通じて、シニア層を含め多様な人材が前を向き、いきいきと働ける組織づくりを推進している。